障害年金で「神経症」が対象外である理由

障害年金では、精神疾患の「神経症」は原則として認定の対象とならないとされています。
その理由は簡潔にまとめると次の理由によるとされています。

  • 神経症レベルの疾患は治り得る。
  • 神経症には疾病利得(家族の同情を得るとか、嫌な仕事から逃れることができる等のこと)がみられる。
  • 障害基礎年金等の障害給付の対象とすれば、自らがそれを治す努力を喪失させるので好ましくない。


神経症と精神病を完全に分けることは困難で、神経症圏(F4)の傷病名がついていても、精神疾患の病態(うつ病等)が診断されるケースも多いため、障害年金が支給されることもあります。

「障害年金が支給されてしまうと、病気が治らないから診断書は書かない」とおっしゃる医師もおられます。上記のように、自らが病気を治す努力を喪失してしまうことを懸念されてのことと思われます。

 

社会保険審査会裁決(平成22年)抜粋

神経症圏の傷病を認定の対象外にすることは、これまでの精神医学的知見に基づいていると思料される。精神疾患の病態に関しては、精神病レベルにあるか、神経症レベルにあるかなどが精神科専門医により判断されるが、神経症レベルにあるということは、当該患者がその疾患を認識し、それに応じた対応をとることが可能であり、引き返しうる状態にある、換言すれば、治り得るということとされている。そうして、精神科領域では、特殊な「疾病利得」なる疾患概要がある。

これは、いわゆる仮病とは異なる概念であり、症状の発現やその症状が続くことによって引き起こされる患者本人の心理的あるいは現実的満足のことで、例えば、ある患者が、保護的環境のもとでは、一見重篤な日常生活動作の障害を思わせる程度の状態を示していても、例えば、それにより家族の同情を得るとか、嫌な仕事から逃れることができる等のことをいう。

当該保護的環境がなくなれば、それが消失することが観察されることがあるが、このような場合に「疾病利得」があるとされ、神経症にはこれがみられ、それは、いわば機能的な変化として捉えられるものである。そうして、自らがその状態から引き返しうるようなものを、障害基礎年金等の障害給付の対象とすれば、それは自らがそれを治す努力を喪失させるので好ましくなく、生じた障害が継続性を持って、いわば器質的な変化として残り、自らの力ではそれが治らないものに障害給付の対象を限ることが相当であると、一般に考えられている。

 

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