障害年金の基本と実務

第1章 障害年金の基本的なしくみ 

-目次-

1 障害年金の基本的なしくみ 

1-1障害年金とは

障害年金は、被保険者期間中の病気やけがで日常生活に支障をきたしたり、労働の制限を受ける状態になったりしたときに支給される年金です。初診日時点での加入制度などに応じて、障害基礎年金・障害厚生年金・障害共済年金の3種類があります。自分で選ぶものではありません。また加入が任意であったため国民年金に加入していなかった期間の初診については特別障害給付金が対象となります。また、それぞれの制度で等級や年金額、受給するための納付要件が異なります。

◆障害年金等の種類

制度等級等加入者等障害年金等の種類年金の決定
国民年金1級・2級日本国内に住む20歳以上60歳未満の人 障害基礎 年金日本年金機構 (厚生労働省)
20歳前で制度に未加入の人
60~64歳の人
厚生年金1級~3級 ・一時金厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する、厚生年金保険加入者障害厚生 年金日本年金機構 (厚生労働省)
共済年金1級~3級 ・一時金公務員・私立学校教職員など障害共済 年金各共済組合
特別障害給付金1級・2級国民年金に任意加入であったため、加入していなかった学生、専業主婦等特別障害 給付金日本年金機構 (厚生労働省)

◆対象となる障害年金制度の例(①~⑦のそれぞれの時期に初診日がある場合の対象制度)

図001

①障害厚生年金(20歳前であっても、障害厚生年金となります)

②障害基礎年金〔20歳前〕(20歳未満で未加入の時期は、20歳前障害基礎年金となります)

③特別障害給付金(国民年金への加入が任意であった時期は、特別障害給付金となります)

④障害共済年金(公務員の場合は、障害共済年金となります)

⑤障害基礎年金(国民年金加入中の場合は、障害基礎年金となります)

⑥障害厚生年金(会社員の場合は、障害厚生年金となります)

⑦障害基礎年金(国民年金に加入していなくても、日本に居住していれば障害基礎年金となります)

なお、障害厚生年金・障害共済年金の場合、2級以上に該当すれば、原則として障害基礎年金も受け取ることができます。

◆ 初診日に厚生年金保険に加入の場合

図002-2

※初診日に共済組合に加入の場合は、障害厚生年金の部分は障害共済年金となります。


図002

障害の程度は政令等で定められています。
国民年金は障害等級1・2級の状態であるとき、厚生年金保険、共済年金は障害等級1~3級の状態であるときに年金として支給されます。
また、厚生年金保険では3級に該当しない場合でも障害手当金として一時金が、共済年金では障害一時金として一時金が支給されます。
なお、一時金の請求を独自に行うわけではありません。
障害年金の請求を行った結果として該当すれば、一時金として決定されます。

1-2どのような条件でもらえるか

障害年金は、国民年金、厚生年金、及び共済年金に分かれています。

 それぞれの障害年金を受給するためには、次の3つの要件を満たさなければなりません。


1.初診日要件

 初診日において、年金制度に加入していること。


2.保険料納付要件

 原則として、必要な納付要件を満たしていること。


3.保険料納付要件

 定められた障害の程度であること。

1-3いくらもらえるか

1.障害基礎・厚生年金の場合



◆ 子がいる場合(子の年齢制限があります)

 
障害基礎年金の額は定額となっていますが、物価の変動等により毎年度年金額が改定されることになっています。


2 障害年金の種類

2-1 障害基礎年金

2-1-1 しくみ

障害基礎年金は、初診日が国民年金の加入中にある場合や、20歳未満または60~65歳のときにある場合に支給対象となります。

20歳に達するよりも前に初診日がある傷病で障害になった人は、20歳に達したとき(初診日から1年6ヶ月後の障害認定日が20歳以後の場合は、その障害認定日)において、20歳に達した後に障害の状態となったときは、障害認定日において1級または2級の障害の状態にあるときは、障害基礎年金が受けられます。
20歳到達時、または障害認定日に障害基礎年金に該当する状態でなくても、その後65歳に達するまでに障害等級に該当するようになれば、事後重症請求による障害基礎年金が受けられます。

一定の保険料納付要件が必要となるため、未納が多い場合は支給されませんが、20歳前に初診がある場合や、生まれつきの障がいの一部については、保険料を納付する義務のない期間のため、納付要件は必要ありません。
そのかわり、所得制限が設けられており、所得により半額、または全額が支給停止となります。

20歳前に初診がある障害基礎年金について

 20歳前に初診がある障害基礎年金については、通常20歳で加入することになる国民年金制度に加入する前の障害による給付であり、障害認定日は次のとおりとなります。

◇ 初診から1年6ヶ月経過後が20歳到達前であれば、20到達時が障害認定となります。



◇ 初診から1年6ヶ月経過後が20歳到達より後であれば、初診から1年6ヶ月経過後が障害認定日となります。




図505-2

20歳前に初診がある障害基礎年金は、初診日における保険料の納付要件は問われませんが、次の制限があります。

所得による制限

所得により、全額、または半額停止となるものです。

前年度の所得を確認して、その年の8月から翌年7月までの支給を決定するために、毎年7月に所得状況届を市町村に提出することになり、前年の所得が政令で定める限度額を超えるときは、その年の8月から翌年の7月まで全額または2分の1が支給停止されます。

  平成20年度以降の全額支給停止の場合の所得限度額は4,621,000円 (給与所得者の実収入で6,451,000円)、2分の1支給停止の場合の所得限度額は3,604,000円 (給与所得者の実収入で5,183,000円)となっており、扶養親族等がある場合は、所得限度額に一定額が加算されます。

 つまり、所得(収入ではありません)が360万円以下であれば、何ら所得制限はかかりません。所得の申告が必要な場合は、必ず申告する必要があり、所得が確認できない場合は、一時支払いの差し止めとなってしまいます。

◆扶養親族がいない場合の例

図008



【例:扶養親族がいない場合】  

 所得が3,604,000円(給与収入で5,183,000円)以下のとき → 全額支給

 所得が3,604,000円を超え、4.621,000円(給与収入で6,451,000円)以下のとき

 → 1/2の支給停止

 所得が4,621,000を超えたとき → 全額支給停止

 扶養親族がいる場合は1人増すごとに原則として380,000円を上記金額に加算します。



◆ 居住要件等による停止

次の場合には、支給が停止となります。

・受給権者が日本国内に住所を有しないとき

・監獄・労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき、少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき



◆ 他の給付を受ける場合の制限

恩給法や労働者災書補償保険法などの政令で定められた他の年金を受けることができる場合、支給調整の対象になり、障害年金がその分減額されます。

◆ 20歳未満であって厚生年金保険に加入していた場合

 20歳未満の厚生年金加入中に初診がある場合には、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受けることができます。この場合、厚生年金保険料を拠出していることから、上記の所得制限等は適用されません。


2-1-2 障害年金をもらうためには(障害基礎年金受給に必要な要件)

次の全ての条件を満たす場合に支給されます。


1.初診日において次のいずれかに該当すること

 A. 国民年金の被保険者期間中であること

 B. 被保険者の資格を失った後でも60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる間であること

 C. 20歳前であること


2.病気やけがによる障害の程度が、20歳に達したとき、または障害認定日において、障害等級表の1級または2級の状態であること


3.保険料の納付要件を満たしていること。(上記①Cの20歳前障害については、納付要件は問われません)


2-1-3 年金額

障害基礎年金は1級と2級の2種類のみです。それぞれ定額となっています。 (令和6年度)

1級 1,020,0000円 

2級 816,000円 

子がいる場合は、次の額が加算されます。

対 象年間額
子1人目234,800円
子2人目234,800円
子3人目から78,300円


子とは、18歳到達年度の末日までの間にある子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子となります。つまり、一般的には高校卒業までが加算対象となり、子に障害があれば20歳になるまで延長されるということになります。



平成23年4月以降は、受給権発生後でも子の加算対象に

平成23年3月までは、障害基礎年金の受給権を取得した当時の生計維持関係のみで子の加算が行われていました。つまり、年金をもらい始めた後に子供が生まれても、子の加算分はもらえませんでした。しかし平成23年4月以降は、受給権発生後であっても、生計維持要件を満たしていれば加算の対象になることになったため、子の加算分をもらうことができるようになりました。  

  



2-2 障害厚生年金

2-2-1 しくみ

障害厚生年金は、厚生年金の加入期間中に初診がある場合に支給されるものです。厚生年金の被保険者は、原則として国民年金にも加入しているため、障害厚生年金の1・2級に該当したときは、障害基礎年金もあわせて支給されます。
ただし、65歳以降に初診日があるときは、たとえ1・2級に該当しても障害基礎年金は支給されません。(受給権がない場合はいいのでは?チェックする)障害厚生年金のみとなります。

障害厚生年金の等級は1級から3級であり、3級の程度にない場合は、障害手当金という一時金の制度があります。

 基金に加入していても、上乗せや独自給付はありません。

2-2-2 障害年金をもらうためには(障害厚生年金受給に必要な要件)

1.厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。

(昭和61年4月以降)

2.上記の病気やけがによる障害の程度が、障害認定日以降において、障害等級表の1級から3級までのいずれかの状態になっていること。

3.保険料の納付要件を満たしていること。

国民年金とは異なり、個人としての厚生年金保険料の未納という取り扱いはないため、多くの場合納付要件を気にする必要はありません。
ただし、国民年金未納期間が多く、その後厚生年金に加入してすぐ初診があるような場合は注意が必要です。
直近1年要件、2/3要件のどちらも満たさないことになるためです。

【例:初診日が厚生年金に加入中であっても、納付要件を満たさないケース】

図003

初診日が昭和61年3月以前の場合は発病日を確認

 初診日が昭和61年3月以前にある場合は、当時は発病日主義であったため、発病日を確認する必要があります。
発病日が厚生年金加入中であればよいのですが、発病日が厚生年金加入中でない場合は、初診日がたとえ厚生年金加入中であっても障害厚生年金の対象外となります。


発病日が厚生年金加入中であって、初診日が国民年金加入中であるような場合は、障害厚生年金でも障害基礎年金での請求も可能となるため、通常有利な障害厚生年金で請求することになります。

なお、発病主義も医証による証明が原則となります。


2-2-3 年金額

障害等級1級の場合

 報酬比例の年金額 × 1.25

障害等級2級の場合

報酬比例の年金額 

障害等級3級の場合

報酬比例の年金額

  ※589,900円が最低保障されます。

  ※配偶者の加給年金額の加算は行われません。

機構パンフ

報酬比例の年金額=(A+ B )×1.031×0.978

A : 平成15年3月以前の被保険者期間 

平均標準報酬月額 × 7.5/1000  × 平成15年3月までの被保険者期間の月数

(※1)                             (※3)

B:平成15年4月以後の被保険者期間 

平均標準報酬額 × 5.769/1000 × 平成15年4月以後の被保険者期間の月数

(※2)                             
(※3)

計算の基礎となる月数

障害認定日の属する月までの被保険者期間(月数)で計算されます。障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金額計算の基礎となる期間に算入されません。(旧法には別規定有)

※1 平均標準報酬月額 平成15年3月以前の被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の被保険者期間で除して得た額です。

※2 平均標準報酬額  平成15年4月以後の被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を平成15年4月以後の被保険者期間で除して得た額です。

※3 被保険者期間が、300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。


配偶者加給年金額

 1級・2級の障害厚生年金を受けられるようになったとき、その人によって生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。

配偶者加給年金額:224,000円

ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上、または中高齢特例該当)を、障害厚生年金、障害基礎年金等を受けられる間は、配偶者加給年金額が支給停止されます。

 なお、平成23年3月以前は、障害厚生年金の受給権を取得した当時に生計を維持する配偶者がいる場合のみ加算されていましたが、平成23年4月以降は受給権の発生よりも後で配偶者を有するようになった場合、その翌月分より配偶者加給年金が加算されることになります。

・配偶者が65歳になると、配偶者加給年金はなくなります。(ただし、配偶者が大正15年4月1日以前に生まれの場合は、引き続き加給年金が支給されます)

・受給権発生時において、配偶者がすでに65歳を超えているために加給年金が加算されない場合においては、配偶者に振替加算が加算されます。


2-2-4 障害手当金

しくみ

障害手当金は、障害厚生年金が受けられる1級~3級の程度に該当しない場合に、必要な条件を満たせば、一時金として支給されるものです。

障害手当金の請求として独自に行うものではなく、障害厚生年金を請求した結果として障害手当金が支給されることになります。
障害手当金に該当する場合であっても、5年の時効があるため、傷病が治った日(症状固定日)から5年が経過している場合には支給されないので注意が必要です。

受給に必要な条件

障害手当金は、次の条件のすべてに該当する方に、一時金として支給されます。

1.厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった傷病の初診日があること。

2.上記の傷病が、初診日から5年以内に治り(症状が固定し)、その治った日において、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害の状態であって、障害の程度が障害等級表(厚生年金保険法施行令別表第二)に定める程度であること。

3.保険料の納付要件を満たしていること。

支給額

報酬比例の年金額 × 2  ( 一時金として支給)

 ※ただし、1,150,200円が最低保障額として支給されます

機構バンフ

※障害手当金の額を計算するときは、1.031及び0.978を乗じません。


支給の調整

次の給付を受けることができる場合は、障害手当金は支給されません。

・厚生年金、国民年金、共済組合等のすべての年金給付

・労働者災害補償保険等の障害給付

健康保険の傷病手当金を受給している場合は、傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達する日まで、傷病手当金は支給されません。

その他

 また、障害認定日において3級の障害厚生年金を受給していた場合は、その後症状が軽快・固定して障害手当金に該当する場合でも、障害手当金は支給されません。(3級の障害厚生年金が支給停止となります)

 障害手当金受給後に障害の程度が増進した場合は、障害年金を受給することができますが、既に受給された障害手当金は返納となります。

図025

2-3 障害共済年金

2-3-1 しくみ

共済組合の加入期間中に初診がある場合に支給される障害年金であり、公務員が対象となります。
なお、2級以上に該当する場合でも、別途障害基礎年金を請求する必要はなく、障害基礎年金が裁定されます。

請求は原則として、所属の共済組合の支部または所属所に、退職している場合は、最後に所属していた支部または所属所に行います。

 

 共済組合の障害給付は、障害厚生年金と同様に、障害等級1級~3級の障害と、障害一時金の制度があります。

 基本的な部分は障害厚生年金と同様ですが、次の点がにおいて異なります。

 ・障害共済年金には「職域加算額」が加算されます。

 ・障害共済年金の場合は、公務外の障害と公務上の障害とに分かれていて、公務外と公務上(通勤途上)では、計算方法が一部異なります。

2-3-2 受給に必要な条件

1.初診日において組合員であること

2.障害認定日(1年6ヶ月経過した日、1年6ヶ月以内に傷病が治るか、固定して治療の効果が期待できないときは、その日)において、障害等級1級~3級の障害の程度に該当したこと。

障害共済年金は、掛金(保険料)の納付要件がありませんので、障害厚生年金とは違い、納付要件を確認する必要はありません。1級2級の場合で、障害基礎年金の納付要件を満たしていない場合は、障害基礎年金は支給されず、障害共済年金のみが支給されます。

2-3-3 支給額

配偶者・子がいる場合(子の年齢制限があります)

障害共済年金額は、次の①厚生年金相当額と、②職域加算額を合計したものとなります。

①厚生年金相当額

(平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの組合員の月数+平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の組合員期間の月数)×1.031×0.978(0.969)

②職域加算額

(平均標準報酬月額×1.5/1000×平成15年3月までの組合員の月数+平均標準報酬額×1.154/1000×平成15年4月以後の組合員期間の月数)×1.031×0.978(0.969)

平均標準報酬月額及び平均標準報酬額は、特例水準の再評価率(巻頭の標準報酬(月)額の再評価率(41ページ平成6年水準)、338~340を参照)で計算します。

配偶者加給年金額 

 226,300円 

 障害共済年金の額は、受給権者によって生計を維持していた、その人の65歳未満の配偶者がいる場合は、加給年金として226,300円が加算されます。なお、子がいる場合は障害基礎年金が加算対象となります。

受給権者がその権利を取得した日の翌月以後に配偶者を有するに至ったことにより、加給年金額を加算することとなったときは、配偶者を有するに至った日の属する月の翌月から、障害共済年金の額が改定されます。

(注)平成23年3月以前は、障害共済年金の受給権を取得した当時に生計維持する配偶者がいる場合に限り、加給年金額の加算の要件とされていました。

◆ 障害等級1級の場合

 前記①計算式 × 125/100が支給されます。

◆ 障害等級2級の場合

 前記計算式どおり支給されます。

◆ 障害等級3級の場合

 前記計算式どおり支給されますが、加給年金の加算・障害基礎年金の支給はありません。

最低保障額

保険料納付要件を満たしていないなどの理由により、障害基礎年金が支給されない場合は、厚生年金相当額が589,900(584,500)円最低保障されます。3級障害共済年金も同様です。

計算するときの留意点

 ①生年月日による給付乗率の読み替えはありません。

 ②組合員期間の月数は、300に満たないときは300とします。

 ③組合員期間の月数の計算期間は、障害認定日の属する月までとなります。

  障害認定日の属する月後の組合員であった期間は、計算の基礎となりません。

  なお、報酬比例部分の物価スライド率の特例については、巻頭資料41ページ平成6年水準を参照してください。

2-3-4 その他の留意点

在職による停止

障害共済年金は、共済組合、または厚生年金に加入中である場合、次の条件により支給停止となります。

1. 共済に在職中の停止

障害共済年金の受給権者が、公務員として在職中である場合は、在職支給停止のしくみにより支給停止となります。

なお、障害基礎年金についての支給は停止されず、在職中でも全額受給することができます。この場合、職域加算額は、全額支給停止されます。ハンド374

※同一の共済年金と、通算制度を共有している共済組合に限ります。

2. 厚生年金加入中の停止

障害共済年金の受給権者が再就職などにより厚生年金の被保険者等となったときは、その月の翌月から、厚生年金保険の被保険者である間、年金の月額と報酬等の月額(賞与を含む)の合計額が46万円を超えた場合、年金の一部が支給停止されます。 

公務等の理由による障害共済年金の特例

公務・通勤災害(公務等)の場合にあっては、別に障害共済年金の算定式があり、地方公務員災害補償法に基づく傷病補償年金などが支給される場合には、職域部分の算定額の一部が支給停止されます。また、公務等による障害共済年金のうち厚生年金相当額と職域年金相当額を合算した額が、最低保障額より少ないときは、最低保障額によることとなっています。 

職域加算額が次の計算式となります。

障害等級1級の場合

{平均標準報酬額×12×23.077/100+平均標準報酬額×1.422/1000×(組合員期間の月数-300月)}×1.031×0.978(0.969)

平成15年3月以前は平均標準報酬額が、平均標準報酬月額に23.077/100が30/100に、1.442/1000が1.875/1000となります。

障害等級2級・3級の場合

{平均標準報酬額×12×15.385/100+平均標準報酬額×1.154/1000×(組合員期間の月数-300月)}×1.031×0.978(0.969)

平成15年3月以前は平均標準報酬額が、平均標準報酬月額に15.385/100が20/100に、1.154/1000が1.5/1000となります。

 公務上(通勤途上)の障害共済年金には、次の額が最低保障されます。

1級 4,183,500円(4,144,000円)

2級 2,583,300円(2,559,500円)

3級 2,337,300円(2,315,800円)

【注意】公務上の障害において、国家公務員災害補償法の障害補償年金等が支給される場合は、下線部分に物価スライド率を掛けたものが支給停止されます。

障害年金の支給特例

昭和61年3月31日において、すでに障害の状態にある人が、同日に退職したならば旧制度による障害年金を受けることができる場合には、同日に退職したものとみなして計算した旧障害年金の額が支給されます。

みなし従前額の保障

昭和61年4月1日前の組合員である間の病気やケガに対して、昭和61年4月以後障害の状態となり、退職した人に対して障害共済年金が支給される場合は、その障害共済年金の額が、旧障害年金の給付理由が生じていたとしたならば、その日において受けることのできた障害年金の額よりも少ない場合は、障害年金の額が保障されます。

公務上の理由による旧障害年金

 最低保障額

  障害等級 

1級・・・5,165,700円

2級・・・3,369,800円

3級・・・2,337,300円

扶養加給額 

妻である配偶者・・・203,500円

  子、孫・・・65,400円

 第3子、孫以降・・・14,500円

 (配偶者のいない18歳年度末までの子、孫、又は障害の状態にある子、孫)

  妻である配偶者がいない場合、子孫1人に限り・・・138,100円

旧共済年金制度では、障害等級に該当する場合、退職しないと障害年金は受給できませんでした。新制度となり、在職退職年金同様、在職支給停止のしくみが適用されることになっています。


障害基礎年金の決定について

障害共済年金の1・2級に該当した場合は、障害基礎年金が日本年金機構本部から原則支払われますが、障害基礎年金の納付要件を満たしていなければ決定されません。

2-3-5 障害一時金

 一時金制度については、次のとおり公務外の障害のみ適用されます。

  公務外の障害・・・・・・・・・一時金制度あり

  公務上(通勤途上)の障害・・・一時金制度なし

1. 障害一時金はどのような条件でもらえるか

 公務外の傷病を理由とする、初診日において組合員であった人が、次の理由により該当したとき、支給されます。

① 退職した時に、障害一時金相当の程度の障害の状態(症状固定)であるとき。

② 療養の給付等の支給開始後5年を経過しない組合員が、退職後において、療養の給付の支給開始後5年を経過するまでの間に、傷病が治るか、または症状が固定したとき。

2. 障害一時金の額はいくらもらえるか

障害共済年金の3級の計算式の200/100となります。物価スライド特例措置は行われません。

また、1,150,200円が最低保障されます。


3.障害一時金が受給できない場合(支給調整)

次の給付を受けることができる場合は、障害一時金は支給されません。

・厚生年金、国民年金、共済組合等のすべての年金給付

・労働者災害補償保険の障害給付


2-4 特別障害給付金

2-4-1 しくみ

国民年金に任意加入していなかったために、障害基礎年金等が受けられない人が請求することができる、平成17年に施行された給付制度です。
請求月の翌月分からが支給対象となり、障害年金でいう認定日請求(遡及請求)を行うことはできません。

 

2-4-2 対象となる人

・平成3年3月以前に国民年金に任意加入していなかった学生

 (定時制、夜間部、通信は除かれます)

・昭和61年3月以前に国民年金に任意加入していなかった、厚生年金・共済組合の加入者等の配偶者


2-4-3 支給要件

 国民年金に任意加入していなかった期間中に生じた傷病が原因で、現在障害基礎年金の1・2級の障害の状態にある人です。

 ただし、次の場合には、特別障害給付金は支給されません。

  1.日本国内に住所を有しないとき。

  2.刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。

 

2-4-3 支給額

1級該当者……月額49,500円

2級該当者……月額39,600円   (平成24年度の額)

※年金ではないため、主に月額表記されます

※2ヶ月に1回、偶数月に支払われます。年金とは違い、振込通知書がその都度送られます。

2-4-4 請求時期

 65歳に達する日の前日まで。

2-4-5 手続き方法

住所地の市区町村の国民年金窓口で請求を行います。

なお、審査・認定・支給に関する事務は、日本年金機構が行います。

2-4-6 所得制限

特別障害給付金には所得制限等があり、この所得制限は20歳未満障害基礎年金の所得制限が準用され、本人の所得により全額、または1/2の額が、支給停止となります。

2-4-7 支給調整

 次の給付が支給されている場合は、その金額が調整され減額されます。

 ・老齢給付、遺族給付などの老齢、死亡を理由とする給付

 ・労災保険等による年金たる保険給付

2-4-7 制度の作られた背景

 この制度は、「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」(平成16年12月10日交付)に基づき支給される、福祉的措置としての給付金です。年金ではありません。平成3年3月までは、大学生等は国民年金に加入するかどうかは自由でした。
このため、20歳を超えた学生が予期しない事故や病気等で障害を負ってしまった場合は、初診日において年金制度に加入していないため、障害年金の対象とならなかったのです。(初診日が20歳前であれば20歳前障害の対象となります)

 このため、学生期間に国民年金に任意加入しなかったために、障害無年金者となった方々が集団訴訟を行いました。学生障害者無年金訴訟とよばれるものです。
この訴訟の結果、全国各地の地裁で国側が敗訴したことを受けて、議員立法により法制化されました。財源は全額国庫負担となります。


第2章 障害年金の制度・用語解説  

1 保険料納付要件

保険料納付要件とは

 障害厚生年金・障害基礎年金を受給するには、原則として保険料納付要件(次の①または②)を満たす必要があります。

  • 3分の2要件(原則による納付要件)

初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付又は免除されていること

  ※計算するにあたっては、小数点まで計算のうえ、2/3=0.6666・・・と比較します。

  ※合算対象期間(カラ期間)は被保険者期間ではなく、計算の分母分子に含みません。

  • 直近1年要件(経過措置による納付要件)

初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

   

  • ②の要件については初診日が令和8年4月1日前にある場合の特例となっています。

 実務上は、まず②の直近1年要件を確認します。確認する期間が短くて済むことと、②を満たしていれば、①の確認をする必要がないためです。

 ②の直近1年要件を満たしていない場合には、3分の2要件を確認します。

【事例1 直近1年要件の確認方法】

図503

この事例では、平成24年1月~12月が納付されているので、②の要件を満たすことになります。この期間さえ納付されていれば、他の期間は未納でも納付要件を満たします。 

 また、納付期間が合算対象期間(カラ期間)であっても、納付要件を満たします。

【事例2 初診日が60歳以降である場合の直近1年要件】

図513


【事例3 2/3要件の確認方法】

図515

10月/13月 >  2/3     のため、納付要件を満たします。

(0.769…)       (0.666…)

20歳前に初診がある場合

 20歳前に初診日のある障害による障害基礎年金の場合は、保険料納付要件は問われません。

60歳~64歳時に初診日がある場合

60歳~64歳時に初診日がある場合は、その期間は国民年金の強制加入期間ではないため、初診日のある月の前々月までの1年間に被保険者期間がない場合があります。
この場合は、被保険者期間のある月まで遡り、この月までの1年間のうちに、保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がない場合に、保険料納付要件を満たしたものとされます。
ただし、初診日が65歳以後の場合はこの特例は適用されません。

 

平成3年5月1日前に初診日がある場合

平成3年5月1日前に初診日のある傷病については、保険料納付要件の「初診日の属する月の前々月」が「初診日の属する月前における直近の基準月(1月、4月、7月、10月)の前月」となります。

図511


保険料納付済期間とは

障害基礎年金における保険料納付済期間とは、次のア~工に該当する場合をいいます。

ア. 国民年金の第1号被保険者期間及び昭和61年3月31日以前の国民年金被保険者のうち、 保険料を納付した期間(任意加入被保険者期間のうち保険料を納付した期間を含みます。)

イ. 国民年金の第2号被保険者期間(20歳前と60歳以降の老齢給付の受給権が発生するまでの期間を含みます。)

ウ. 国民年金の第3号被保険者期間

工. 昭和61年3月31日以前の被用者年金の加入期間(20歳前と60歳以降の期間を含みます。)



-補足説明-

初診日以降に初診日前の保険料を納付した保険料納付済期間や3号特例を認められたことによって保険料納付済期間とみなされた期間は、いずれも保険料納付済期間とはならないため、納付の計算に含めることができません。初診日よりも前に納付していること、3号特例届の届出を行っていることが必要です。



保険料免除期間とは

 障害基礎年金における保険料免除期間とは、次のア~ウに該当する場合をいいます。

ア. 国民年金の第1号被保険者期間及び昭和61年3月31日以前の国民年金被保険者期間のうち、保険料の全額免除を受けた期間

イ. 国民年金の第1号被保険者期間のうち、平成14年4月からの保険料の半額免除、平成 18年7月からの4分の3免除、4分の1免除を受けた期間(免除された残りの保険料を納めた期間のみ)

ウ. 学生の保険料納付特例、若年者の保険料納付猶予を受けた期間のうち、保険料を追納しなかった期間


-補足説明-
初診日以降に初診日前の免除を申請して認められた期間は、保険料免除期間とはなりません。ただし法定免除は除かれるため、免除期間として計算できます。ただし、第3号被保険者期間は、初診日以降に届出があったとしても、保険料納付済期間に算入することができます。

◆納付要件への可否のとりまとめ

初診日以後の保険料納付期間納付要件に算入できない
初診日以降に届出の第3号被保険者期間納付要件に算入できる
3号特例期間納付要件に算入できない
初診日以後に届出をした申請免除期間納付要件に算入できない
初診日以後に届出をした法定免除期間納付要件に算入できる



2 障害の程度

 障害年金は、その障害によって労働や日常生活に制限を加えることが必要となった場合に障害等級に応じて年金が支給されます。

障害基礎年金 → 障害等級の1級・2級

障害厚生年金 → 障害等級の1級・2級・3級・障害手当金

障害共済年金 → 障害等級の1級・2級・3級・障害一時金

障害の程度については、次の政令に定められています。

・国民年金法施行令別表 (障害等級1級・2級)

・厚生年金保険法施行令別表第1 (障害等級3級)

・厚生年金保険法施行令別表第2 (障害手当金)

 

その障害の状態の基本は、 次のとおりです。

1

身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとします。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものです。

例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないものまたは行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものです。

2

 身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとします。この日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものです。

 例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないものまたは行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものです。

3

 労働が著しい制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとします。また、 「傷病が治らないもの」 にあっては、 労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとします。 (「傷病が治らないもの」 については、 障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当します。)

 

障害手当金

「傷病が治ったもの」 であって、労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとします

 「傷病が治ったもの」とは、器質的欠損や変形等の場合は、医学的に傷病が治ったとき、又はその症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待できない状態に至った場合のことをいいます。

※共済もいっしょ?

 

障害等級表

1級      

程度障害の状態
1 両眼の視力の和が0.04 以下のもの
2 両耳の聴力レベルが100 デシベル以上のもの
3 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
4 両上肢の全ての指を欠くもの
5 両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの
6 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
7 両下肢を足関節以上で欠くもの
8 体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
9 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
10 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
11 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

2

程度障害の状態
1 両眼の視力の和が0.05 以上0.08 以下のもの
2 両耳の聴力レベルが90 デシベル以上のもの
3 平衡機能に著しい障害を有するもの
4 そしゃくの機能を欠くもの
5 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
6 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
7 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
8 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
9 一上肢の全ての指を欠くもの
10 一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの
11 両下肢の全ての指を欠くもの
12 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
13 一下肢を足関節以上で欠くもの
14 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
15 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
16 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
17 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

3

程度障害の状態
1 両眼の視力が0.1 以下に減じたもの
2 両耳の聴力が、40 センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
3 そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
4 脊柱の機能に著しい障害を残すもの
5 一上肢の3 大関節のうち、2関節の用を廃したもの
6 一下肢の3 大関節のうち、2関節の用を廃したもの
7 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
8 一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上失ったもの
9 おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの
10 一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
11 両下肢の10趾の用を廃したもの
12 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
13 精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
14 傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの

障害手当金

程度障害の状態
1 両眼の視力が0.6以下に減じたもの
2 1眼の視力が0.1以下に減じたもの
3 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4 両眼による視野が2分の1以上欠損したものまたは両眼の視野が10度以内のもの
5 両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの
6 1耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
7 そしゃくまたは言語の機能に障害を残すもの
8 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
9 脊柱の機能に障害を残すもの
10 一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
11 一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
12 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13 長管状骨に著しい転位変形を残すもの
14 一上肢の2指以上を失ったもの
15 一上肢のひとさし指を失ったもの
16 一上肢の3指以上の用を廃したもの
17 ひとさし指を併せ1上肢の2指の用を廃したもの
18 一上肢のおや指の用を廃したもの
19 一下肢の第1趾または他の4趾以上を失ったもの
20 一下肢の5趾の用を廃したもの
21 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
22 精神または神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

◆ 備考

1 視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によって測定する。

2 指を失ったものとは、おや指は指節間関節、その他の指は近位指節間関節以上を失ったものをいう。

3 指の用を廃したものとは、指の末節の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

4 趾を失ったものとは、その全部を失ったものをいう。

5 趾の用を廃したものとは、第1 趾は末節の半分以上、その他の趾は遠位趾節間関節以上を失ったもの又は中足趾節関節若しくは近位趾節間関節(第1趾にあっては趾節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

障害認定基準

障害の程度を認定するために、各傷病についての具体的な基準等を定めたものとして、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」があります。通知として発出されているものですが、審査請求や再審査請求でも「給付の公平を期するための尺度として、この認定基準に依拠するのが相当であると考える」として、この認定基準が使用されています。

「第3 障害認定のための基準」において、各傷病の詳細な認定基準が定められています。

第1節眼の障害第11節心疾患による障害 
第2節聴覚の障害 第12節腎疾患による障害 
第3節鼻腔機能の障害 第13節肝疾患による障害 
第4節平衡機能の障害 第14節血液・造血器疾患による障害 
第5節そしゃく・嚥下機能の障害 第15節代謝疾患による障害 
第6節言語機能の障害第16節悪性新生物による障害 
第7節肢体の障害第17節高血圧症による障害 
第8節精神の障害 第18節その他の疾患による障害 
第9節神経系統の障害 第19節重複障害
第10節呼吸器疾患による障害  

認定基準の改正は頻繁に行われており、最新の障害認定基準を確認することは重要となります。日本年金機構HPから、最新の認定基準を確認することができます。

3 初診日

初診日とは

初診日とは、障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日をいいます。具体的には次のような場合が初診日とされています。 

1.初めて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)  

2.同一傷病で転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日

3.過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日

4.健康診断により異常が発見され、療養に関する指示を受けた場合は、その健康診断日

5.傷病名が確定しておらす、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日

6.じん肺症(じん肺結核を含みます。)については、じん肺と診断された日

7.障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日

8.先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日

9.先天性心疾患や、網膜色素変性症などの遺伝病は、具体的な症状が出現し、初めて診療を受けた日

10.先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま生育した場合は出生日が初診日、育年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後に初めて診療を受けた日


-補足説明-
整骨院、ほねつぎ、鍼灸院等は初診日と認められません。
発達障害(アスペルガー症候群や高機能自閉症など)は、自覚症状があって初めて診療を受けた日が初診日となります。知的障害とは異なるので注意が必要です。



初診日を確認するために必要な書類

◆ 初診の病院と診断書作成の病院が同じ場合

  診断書で初診日が確認できるため、診断書のみで審査可能となります。

◆ 初診の病院と診断書作成の病院が異なる場合

初診病院での「受診状況等証明書」が必要となります。

初診時(1番最初に受診した医療機関)の医師の証明が添付できない場合は、「受診状況等証明書が添付できない理由書」を請求者が作成します。次に、2番目に受診した医療機関による最初の受診医療機関及び初診日が記載されている医師の証明書が提出できるか確認し、添付できない場合は、「受診状況等証明書が添付できない理由書」を請求者が記載作成します。一番古い医師の証明がとれるまで繰り返します。

 ◇初診病院で「受診状況等証明書」がとれない場合    

→ 2番目の病院で受証作成 + 添付できない理由書(初診の病院)

 ◇2番目もとれない場合

→ 3番目の病院で受証作成 + 添付できない理由書(初診・2番目の病院)

 ◇3番目もとれない場合

→ 4番目の病院で受証作成 + 添付できない理由書(初診・2番目・3番目の病院)

                                                     (受証がとれるまで続けます)



受診状況等証明書に、本人の申立てより前に初診日がさかのぼる記述が記載されている場合は、その受診が確認できる受診状況等証明書と病歴状況申立書の追記が必要となるため、最初の時点における初診日の確認は重要となります。

また、診断書を作成した医療機関より以前に請求傷病にかかる受診医療機関がある場合や年金請求日から起算して5年以内に終診がある場合は、必ず医師の証明が必要となります。

 初診日が5年以上遡及する場合、医師の証明(受診状況等証明書・診断書等)がとれないことが考えられます。医療機関においてカルテの保存期限が5年であるためです。しかしながら、患者に的確な診療を行うためにカルテ保存期限の5年を経過していても「患者サマリー」として既往歴を保存している医療機関も現在は多くなっているため、初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合は、まず「受診状況等証明書」がとれるかどうかを確認し、初診時の意思の証明を求めるようにします。


◆ 患者サマリー

「患者サマリー」とは、入院・外来通院患者の診療経過・治療経過を診療開始より現在まで時系列に集約し、現疾患の病状把握のために作成されるカルテのサマリー(要約)です。

 病院に入院したことがある場合、病棟医が外来医への申し送りの意味で必ず作成します。入院していなくても、外来通院中に主治医が代われば、前主治医が作成します。ただし、後者の場合はサマリーを書かないケースも多く見受けられます。

 最近では、インフォームド・コンセントをさらに推し進め、医療の方針を医師に全面的に任せるのではなく、患者が医療に参加し、医師とお互いに協力しながら医療を行っていく必要があるという考えから、患者に開示する医療情報としてのこの「患者サマリー」が使われています。

初診日の証明がとれない場合はどうしたらいいか? (初診日がずいぶん前で、証明がとれない)

受診した病院の終診(転医・中止)から5年が過ぎている場合、当時の診療録が廃棄されていること等の理由により、初診時の病院で受診状況証明書を作成してもらえない場合があります。この場合は、「受診状況等証明書が添付できない理由書」に次の書類の(写)を添付します。

1. 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳

→ 手帳では、交付年月日、障害等級、等級変更の履歴、傷病名(身体障害者手帳のみ)等が確認できます。更新前の手帳も参考になります。

2. 身体障害者手帳等の申請時の診断書

3. 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書

→ 診断書(写)では、傷病の発生年月日、傷病の原因、傷病の経過等を確認することができます。本人が保管されていない場合は、診断書を提出した市区町村の窓口、福祉事務所、 保険会社等に提出した当時の診断書が保管されているか確認してもらってください。

4. 交通事故証明書

→ 交通事故が原因である場合、交通事故証明書で事故発生年月日が確認できるので初診日を特定する資料となります。ただし、警察への届出のない事故については、交通事故証明を交付してもらえません。事故証明がとれない場合は、事故の新聞記事などがあれば添付します。

5. 労災の事故証明書

→ 事故発生年月日、療養開始日等が確認できるので初診日を特定する資料となります。ただし、労災の給付を申請していない事故については、労災の事故証明書はありません。

6. 事業所の健康診断の記録

→ 事業所は、労働安全衛生法の規定により、健康診断の結果を5年間保管する義務がありますので、本人が健康診断の結果を保管していない場合は、事業所に保管されているか確認してください。

7. インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー

→ 傷病の発生からの治療の経過や症状の経過等が確認できますので、初診日を特定する資料となります。

8. 健康保険の給付記録(健康保険組合や健康保険協会等)

→ 初診日に係る健康保険の給付記録が健康保険組合や健康保険協会に保管されている場合があります。給付金支給証明書等の給付記録がもらえないか確認してください。

9. 次の受診医療機関への紹介状

→ 2番目以降の医療機関にて、前医について確認可能な場合もあります。受診状況等証明書を整備する際には、わかる範囲で前医の医療機関名、受診期間、診療内容を具体的に記入してもらうようにしてください。前医からの紹介で受診した場合は、その紹介状の写しを添付してもらえないか確認してください。

10. 電子カルテ等の記録(氏名、日付、傷病名、診療科等が確認されたもの)

→ 患者の受診記録を電子カルテ等に保存している医療機関がありますので、初診日、診療科、傷病名が確認できる画面がありましたら、その画面を印刷したものを添付してください。

11. お薬手帳、糖尿病手帳、領収証、診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)→ お薬手帳では、処方箋を発行した医療機関等が確認できます。糖尿病手帳では、手帳を発行した医療機関と血糖値などの検査数値が確認できます。領収書では、受診日、診療科等が確認できます。診察券では、発行日(受診日)診療科等が確認できます。

12. 第三者証明(20歳前の障害基礎年金に限ります)

→ 複数(2名以上)の第三者(民生委員、病院長、施設長、事業主、隣人等であって、請求者、生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者の民法上の三親等内の親族は含まない。)証明により確実視される場合は、その証明により確認して差し支えないとしています。平成24年1月から実施されています。

年金の決定にあたっては、原則として、本人の申立等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず、必ずその裏付けの資料を収集することとされています。初診時の受診状況等証明書がない場合は、2番目以降の受診医療機関の受診状況等証明書や傷病の性質等を総合的に勘案して、初診日が被保険者期間内であると判断できない場合や、被保険者期間中であることが確認できても初診日を特定できない場合は、原則として却下処分となります。却下処分を回避するためにも、上記の日本年金機構が示している書類に限らず、初診日が確認できる書類、受診していたことが分かる書類等をできるだけ多く添付する必要があります。

【一例】

  ◇生命保険等の請求書類  ◇栄養指導書  ◇入院台帳 

◇病院の受診歴パソコンデータ  ◇日記や家計簿 等

なお、資料が何もなくても、本人の申し立てだけで認められるケースもあります。ポイントは合理性・整合性・矛盾の有無・未納の有無・厚年期間の長短・傷病の性質等です。

また、診療録の保存期限の5年を経過していても、患者に的確な診療を行うために「患者サマリー」として既往歴を保存している医療機関もあるので、まずは医療機関に問い合わせを行いましょう。

初診日の重要性

「障害年金受給のための3つの要件」すべてにかかわってきます。

1.加入要件 (対象となる制度〔国民年金・厚生年金・共済年金・20歳前〕が決まる。)

2.保険料納付要件 (納付要件判断の基準日となる。)

3.障害認定日状態要件(初診日から1年6ヶ月後等の障害認定日以降障害等級に該当していることが必要。)


◆ 初診日が変更になってしまうと・・

◇納付要件判断日がかわる ◇請求できる制度がかわることも 

◇20歳前障害になれば所得制限がかかる

◇認定日請求の場合、認定日が変わることにより診断書の現症日訂正・診断書の追加等が必要。できなければ認定日請求不可。遡及分年金額の減少、認定日未到来となることも。

◇事後重症請求の場合、認定日請求の意思確認が必要となる。

◆ 最悪のパターン





精神科を受診する前に、内科を受診した場合の初診日は?

(精神疾病を例とした初診日の考え方) 

一般に、精神病(器質性精神障害、てんかん、精神遅滞を除く)の場合において、最初から精神科に受診される方は少なく、当初は、精神病の確定診断がなされないまま(「自律神経失調症」や、「不眠症」等の内科疾患)受診され治療を受けている方が多く、正確な傷病名が確定した日でなくても、請求傷病の症状として診療を受けていたと認められる場合は、その日が初診日となります。

 実務的には、「頭痛」で内科を受診したような場合は、精神疾患の初診とされない事例が多く見受けられます。 一方「不眠」「胃炎」などでの受診は、精神疾患の初診とされる傾向があります。

 神経症等で最初に受診し、その後統合失調症等の診断がされた場合、最初の受診時に統合失調症の前駆症状があれば、その後の経過も考慮して最初に受診した神経症等が初診とされることが多くなっています。

◆ 初診日の判断は難しい…

上記を基本としながらも、請求には多くのケースがあり、決定も個々のケースによって異なります。

【事例】最初に受診した「筋緊張性頭痛」を初診として、「双極性障害」で障害厚生年金請求

→相当因果関係がないという判断がなされた。

資料のない初診日と、資料のある2番目の受診日、どちらが障害年金における初診日となるのか?

原則として、「資料のない初診日」が障害年金における初診日となります。
初診日を決めるのは総合的な判断によるものであり、単に初診の医療機関の証明がとれないことを理由として、2番目以降の証明がとれた医療機関の最初の受診日を初診日としないよう取り扱われています。
医証がない場合は、初診日が特定できないとして却下となるか、申し立ての日を初診として認定されますが、「資料のある2番目の受診日」が初診日とされるケースもあります。

【事例】

Ⅰ. 初診日が確定できないとして却下 〔障害厚生〕 

障害厚生において多い事例。再審査請求においても却下。

Ⅱ. 2番目の受診が障害年金の初診とされた〔障害厚生〕

H13.9 不眠、抑うつで内科受診(証明なし)。その後H13.10精神科受診(受証が有り、前医内科受診の記載有)。ポイントは、認定医の判断・傷病の性質・厚生年金に長期加入しているかなど。 

Ⅲ. 2番目の受診が障害年金の初診とされた〔審査会裁決・容認〕

発病日及び初診日が厚生年金期間にあることを確認できないため却下処分となった。審査会において、2番目の受診日が初診日とされ、支給となった。

Ⅳ. 2番目の受診が障害年金の初診とされた〔審査会裁決・容認〕

障害厚生を請求するも、本人の申し立ての日(H6)を確認できる書類がなく却下処分。審査請求却下。審査会において、初診がH10とされ、障害年金が支給された。「何も資料がないのだから、請求人の主張するH6の主張を採用することはできない。初診は確認することのできるH10である」とされた。

Ⅴ. 2番目の受診が障害年金の初診とされた〔審査会裁決・棄却〕

H10.1(20歳前)が本人申し立ての初診。H12.10.5が次の受診(受証で確認可・納付要件を満たしていない)。審査の結果、H12.10.5は受給資格要件を満たしていないため不支給。再審査請求するも、直接それに関与した医師又は医療機関が作成したもの、又はこれに準ずるような証明力の高い資料として確認できるのはH12.10.5の受診状況等証明書であるとして却下。

Ⅵ. 確定診断をもって初診日ではない(初診日が本人請求どおりに遡った事例)〔審査会裁決・容認〕

 統合失調症について、発病時は通常前駆症状として神経衰弱状態、強迫症状、不眠などを示すこともあるが、 その段階においては、妄想知覚や妄想着想などといった統合失調症に特徴的な症状は出現せず、この時期に診断を受けた場合には神経性障害、うつ病などと診断されやすい。このような状態で5,6年経過するうちに、統合失調症に特徴的な症状が現れ、統合失調症の確定診断がなされる。上記統合失調症の特徴を無視して、確定診断日をもって初診日とすれば、社会保険制度として相当でない結果になることを考慮しない失当なものである。統合失調症の前駆症状ないし初期症状の発症、その後の憎悪、最終的に統合失調症の診断結果となったとみるのが相当である。  

実務における初診日確認のポイントは?

◇ 診断書に医師がどのように記載するか。

◇ 診断書・受診状況等証明書・病歴申立書に、請求する初診日よりも前の受診の記載がないか。「前医において」「紹介され受診」等があれば確認が必要です。

◇ 初診日をいつとして請求するかについて本人の意思は重要ですが、そのうえで前医の記載等があれば受診状況等証明書・病歴就労状況等申立書等の整備が必要となります。
相当因果関係がないことを確認しなければならないためです。

返戻の具体的な通知内容の例 

A病院の受診状況等証明書の記載より、「大学1~2年ごろ、精神不安定となりBメンタルクリニックを受診」と記載がありますので、請求傷病との因果関係を確認するため、病歴就労状況等申立書及び受診状況等証明書を整備願います。
なお、受診状況等証明書が添付できない場合は、その旨の理由書を提出のうえ、参考資料として診察券、領収書、お薬手帳等の写しがあれば添付願います。


知的障害・発達障害の初診日は?

 

◆ 知的障害(発達遅滞)

原則出生日(誕生日)が初診日となります。基本的に療育手帳の添付が必要となります。

 

◆ 発達障害

アスペルガー症候群や高機能自閉症などは、自覚症状があって初めて診療を受けた日が初診日となります。知的障害を伴っているものは、原則として知的障害で扱われます。

その他困難事例

誤診等による場合

 患者が訴える自覚症状に基づく診療を行った医師が、正確な傷病名で診断していない場合でも、その自覚的所見又は他覚的所見に基づき診療を行った場合は初診となります。例えば「胃潰瘍」と診断されたものの、実は「胃がん」であった場合や、背中の痛みに対して「背部痛」と診断されたものの、他院において精密検査の結果、その痛みの原因が「がん」の脊椎転移であることが判明した場合のように、初診日と推定できる日から「誤診」が判明するまでに、あまり日が経っていないなど、客観的にもその傷病の初診日とみなすことができる場合にのみ因果関係が認められます。

 障害の原因となった傷病とは明らかに別傷病で、その別傷病の自覚的症状のみが訴えられていたような場合のように、別傷病で受診していた当時に障害の原因となった傷病が発病していたと推定されるだけでは初診日とはみなすことはできません。例えば、高熱で受診し、医師の診断は「流行性感冒」でしたが、その後の精密検査でベーチェット病と診断された場合のように、障害の原因となった傷病に対する診療が行われず、別傷病のみで診療を受けていたような場合です。

 別の傷病で診療を受けていた当時に発見(診察)されなかった疾病は、発見され引き続き診療を受けた日が初診日となります。

 ただし、障害の原因となった傷病を診察した医師の単純な診断傷病名の誤りについては、同一の傷病であることが事後に確認できれば、初診日として認められます。

 

4 障害認定日

障害認定日とは、障害の程度の認定を行うべき日のことをいいます。具体的には、障害の原因となった病気やけがで初めて医師にかかった日(初診日)から起算して1年6ヶ月を経過した日か、その期間内に治った場合は治った日(症状が固定した日)のことをいいます。
例えば、初診日が平成22年8月1日の場合、初診日から起算して1年6ヶ月経過した日は平成24年2月1日となります。

また、20歳前に初診日がある場合は、初診日から起算して1年6ヶ月経過した日が20歳より前にある場合は20歳に到達した日、20歳より後にある場合は1年6ヶ月経過した日のことをいいます。

初診日から起算して1年6ヶ月を経過する前に障害認定日として取り扱う事例

障害認定基準等で初診日から起算して1年6ヶ月を経過する前に障害認定日(傷病が治った状態)として取り扱う事例は次のとおりです。
下記以外でも障害認定基準に記載されている「傷病が治った場合」に該当すれば、初診日から起算して1年6ヶ月を経過する前に障害認定日として認定することは可能です。(診断書の内容によっては、障害等級の目安より上位等級となることがあります。)

傷病が治った状態障害認定日障害等級の目安等
喉頭全摘出喉頭全摘出日2級
人工骨頭、人工関節を挿入置換挿入置換日3級 上肢3大関節又は下肢3大関節に人工関節を挿入置換した場合
切断又は離断による肢体の障害切断又は離断日(障害手当金は創面治癒日)1肢の切断で2級、2肢の切断で1級 1下肢のショパール関節以上で欠くと2級、 リスフラン関節以上で欠くと3級
脳血管障害(脳出血・脳梗塞)初診日から6ヶ月経過後 +症状固定のとされた日初診日から起算して6ヶ月目に必ず症状固定とされるわけではない
在宅酸素療法開始日(常時使用の場合)3級 常時(24時間)使用の場合
人工弁、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)装着日3級
心臓移植、人工心臓、補助人工心臓移植日又は装着日1級
※術後の経過で等級の見直しあり
CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)装着日重症心不全の場合は2級
※術後の経過で等級の見直しあり
胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により人工血管(ステントグラフト含む)を挿入置換挿入置換日3級
※一般状態区分が「イ」か「ウ」の場合
人工透析療法透析開始日から起算して3ヶ月を経過した日2級
人工肛門造設、尿路変更術、新膀胱造設3級 左記のいずれか1つ
2級 人工肛門+新膀胱または尿路変更術 2級 人工肛門+完全排尿障害(カテーテル留置、または自己導尿の常時施行)


-補足説明-
初診日から起算して1年6ヶ月を経過する前に人工臓器等を装着した方にとっては、人工臓器等を装着した日が障害認定日となりますので、障害認定日で2級以上の受給権が発生しない場合、初診日から起算して1年6ヶ月経過後に障害基礎年金の請求を行っても事後重症による請求となります。(人工弁は2級以上に認定する場合、認定基準上、装着から6月以上経過していることが必要となります。)  

5 相当因果関係

 

傷病名は異なっていても、前の傷病が進行して後の障害に至った場合、前の疾病又は負傷がなかったならば、後の疾病が起こらなかったであろうと認められる場合は、相当因果関係ありとされ、前後の傷病を同一傷病として取り扱われます。ただし、通常、後の疾病には負傷は含まれません。

相当因果関係ありとして取り扱われることが多い例 

1. 糖尿病と糖尿病性網膜症又は糖尿病性腎症、糖尿病性壊疸(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉鎖症)は、相当因果関係あり。

2. 糸球体腎炎(ネフローゼを含む)、多発性のう胞腎、慢性腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱います。

3. 肝炎と肝硬変は、相当因果関係あり。

4. 結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合は、相当因果関係あり。

5. 手術等による輸血により肝炎を併発した場合は、相当因果関係あり。

6. ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場合には、相当因果関係あり。

7. 事故又は脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係あり。

8. 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係あり。

9. 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係あり。

相当因果関係なしとして取り扱われることが多い例 

1. 高血圧と脳出血又は脳梗塞は、相当因果関係なし。

2. 近視と黄斑部変性、網膜剥離又は視神経萎縮は、相当因果関係なし。

3. 糖尿病と脳出血又は脳梗塞は、相当因果関係なし。


-補足説明-
医学的には、高血圧と脳出血は「因果関係」がありますが、障害認定基準における「相当因果関係」は、なしとされます。




6 社会的治癒(再発・継続)

過去の傷病が治癒したのち、再び同一傷病が発症した場合は、過去の傷病とは別傷病とし、治癒したと認められない場合は、傷病が継続しているものとして取り扱われます。
どちらで取り扱われるかにより初診日が異なることになるため、前述の初診日の重要性のとおり、初診日がいつとなるかは、障害年金請求にとって大きなポイントとなります。

社会的治癒は主に社会通念上の判断であり、医学的判断とはまた別となっています。
社会的治癒の判断は難しいのですが、社会的治癒とされる判断材料は次のとおりです。

1.医療行為を行う必要がなくなったこと。

2.長期にわたり自覚的にも、他覚的にも病変や異常が認められないこと。

3.一定期間、普通の生活や就労をしていること。

医学的に治癒していないと認められる場合であっても、社会的治癒が認められる場合は、再度発症したものとして取り扱われます。

受診していないときの状態を示す診断書等は存在しないため、病歴申立書への記載内容が非常に重要となります。社会的治癒とされるには、傷病等にもよりますが、少なくとも5年以上は投薬や治療がなく、普通の生活や就労をしている必要があります。
このため、投薬治療中である場合には、普通の生活や就労をしていても社会的治癒とはなりません。
また、治療の必要がありながら単に経済的理由などによって医療を受けないものについては、たとえ社会復帰していたとしても、社会的治癒があったとは認められません。



7 請求方法(認定日請求・事後重症請求・初めて2級による請求)

請求方法には、障害認定日請求・事後重症請求・初めて2級による請求があります。

大きな違いは次のとおりです。

請求方法いつからもらえるか必要な診断書
障害認定日請求障害認定日の翌月分から障害認定日のもの (1年以上遡及する場合は、併せて請求時のもの)
事後重症請求請求日の翌月分から請求時のもの
初めて2級による請求請求日の翌月分からそれぞれの傷病の請求時のもの


1.認定日請求

障害基礎年金は、障害の原因となった傷病の初診日において、①被保険者期間であること、又は②被保険者であった方で、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること、のいずれかに該当する方が、障害認定日に障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にあるときに支給されます。

 この場合、障害認定日が受給権発生日となり、支給開始は障害認定日の翌月からとなり、遡及して支払われます。時効があるため、遡及は最大で5年間となります。

 

図021


 障害認定日以降3ヶ月以内の現症日の診断書を添付することになります。障害認定日から1年以上たってから請求する場合は、請求前3ヶ月以内の現症日の診断書もいっしょに添付します。審査の結果、途中の状態を確認する必要がある場合は、さらに診断書の提出が求められる場合があります。

2.事後重症請求

障害認定日において病状や状態が軽く、障害等級に該当しなかった人が、その障害で65歳に達する日の前日までに障害等級に該当する状態になったときは、65歳に達する日の前日までに請求することによって支給されます。65歳に達した後は、障害の状態が悪化しても、障害基礎年金は請求できないため、注意が必要です。

また、障害認定日時点において障害等級に該当していたとしても、カルテが破棄された等で診断書の提出ができない場合は、障害認定日時点の状態を確認することができないため、事後重症請求となってしまいます。

請求前3ヶ月以内の現症日の診断書を提出します。障害認定日時点の診断書は不要です。

事後重症請求は請求書の受付日が受給権発生日となり、支給開始は請求日の翌月からとなります。  

図022



 
この図のように、認められれば事後重症請求よりも、認定日請求の方がより多くの期間分年金をもらうことができます。
受給できる年金は時効により5年という制限がありますが、仮に障害基礎年金2級で5年以上遡及して決定されれば約400万円となります。
まずは認定日請求が可能かどうか検討しましょう。ポイントは、診断書がとれるか、障害の程度がどの程度であったかです。

3.初めて2級による請求

複数の軽度の障害を併合して初めて2級以上に該当する場合に支給されるものです。

障害等級の1級又は2級に該当しない程度の障害の状態(障害等級3級以下)にある人が、新たに生じた3級以下の傷病(以下「基準傷病」という。)により基準傷病の障害認定日以降65歳に達する日の前日までに、基準傷病による障害と他の障害とを併せ、初めて障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態になったときは、請求することによって障害基礎年金・障害厚生年金・障害共済年金が支給されます。

 この場合、初めて1級又は2級の状態を確認できた日(診断書の現症年月日や人工臓器等を装着した日等)が受給権発生日となり、支給開始は請求日の翌月からとなります。現症年月日が受給権発生日となることで、法定免除等に影響がでることになります。

 上記の内容を満たしていれば、事後重症請求と違い、65歳以降でも初めて2級による請求は可能です。  

図005

 上記のとおり、2つの障害が3級以下の障害である必要があるため、最初から初めて2級による請求をするという判断は難しいことが多いです。
通常の事後重症請求を行い、結果的に初めて2級に該当し、請求方法を変更するということもあります。


◆ 請求する年齢に注意

 「事後重症による請求」は、65歳に達する日の前日までに請求が必要で「障害認定日による請求」、「初めて2級による請求」は65歳以降でも請求は可能です。
ただし、老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合は、障害認定日による請求であっても請求できないことがあります。

◆ 診断書の現症日について

初めて1級又は2級による請求は、65歳に達する日の前日までに障害等級の1級又は2級に至ったことが確認できる診断書の添付が可能であれば、65歳以降でも請求が可能です。受給権発生日は、基準傷病の障害認定日以降65歳に達する日の前日までで障害等級に該当した日となるため、その時点より請求日が1年以上経過する場合は、請求日以前3月以内の診断書が必要となります。

基準傷病以外の傷病は、初診日における加入制度や納付要件を問われません。

基準傷病以外の傷病が、過去に2級以上に該当したことがある場合は、初めて1級又は2級による請求はできません。


事後重症請求と初めて2級による請求の違い

区分事後重症初めて2級
年金受給権の発生裁定請求書の受付年月日併合して2級以上に該当した日
支給開始年月請求書受付年月日の翌月請求書受付年月日の翌月
65歳以降の請求できないできる


第3章.障害年金の請求

1 障害年金の請求方法(請求から受給までの流れ)

1. 請求

 請求をする制度に合わせて、次のところに障害年金の請求をします。

制 度請求先
障害基礎年金 (初診日が国民年金第1号被保険者の間であるもの)  お住まいの市区町村役場、 または年金事務所
障害厚生年金 障害基礎年金(初診日が国民年金第3号被保険者の間であるもの)全国の年金事務所
障害共済年金各共済組合

2. 審査

障害の状態の認定や障害年金の決定に関する事務が行われます。

審査は障害基礎年金も、障害厚生年金も、機構本部(障害年金センター)で年金決定が行われます。

3. 振込

年金証書の送付から約1~2ヶ月後に、年金に支払いが開始されます。振込は年金請求時に指定された口座に行われ、その後は偶数月に2ヶ月分ずつ振り込まれます。
初回や随時支払いの場合は奇数月に支払われる場合もあります。


4. 諸変更に係る通知

支給額変更通知書で通知されます。変更理由欄に次のように表示されます。

コード状態表示
51-11障害の状態がよくなったとき障害の状態が年金を受給できる程度でなくなったため、年金の支給を停止しました。
51-12等級変更により3級該当で基礎年金停止になるとき障害の状態が障害等級3級になったため、障害基礎年金の支給を停止しました。
51-07労基法の保償が受けられるときなど労働基準法に基づく障害(遺族)補償を受給される場合は、同―事由による障害(遺族)年金は、一定期間受給することができないため、年金の支給を停止しました。
51-09第三者行為障害または死亡について第三者から損害賠償を受けたため、年金の支給を停止しました。
52-○○上記理由による停止が終了したとき年金の支給停止していた事由がなくなったため、年金の支給を開始しました。
56-07 56-17 64-11 64-12障害の等級変更により年金額が変わるとき障害の状態(障害等級)が重くなったため 障害基礎年金の支給決定をしました。
 受給権が消滅したとき「年金失権通知書」で通知されます。


2 請求に必要な書類

1.加給年金等の加算対象者なし   → 「共通」+「Aの書類」

2.加給年金等の加算対象者あり   → 「共通」+「Bの書類」

共通(必ず必要となる書類)

必要書類備考
診断書 
病歴申立書(障害基礎) 病歴就労状況等申立書(障害厚生) 
受診状況等証明書診断書作成の医療機関が初診の医療機関の場合は原則不要
年金手帳・年金証書 
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳写しを添付
裁定請求書 
通帳のコピー(または請求書に金融機関の確認印)請求者名義の預金通帳、貯金通帳


図012

平成24年1月1日に人工関節挿入をしたことの確認ができる診断書であれば、②の診断書だけで障害認定日請求が可能です。

ただし、平成24年1月1日(障害認定日)の状態が診断書からは不明であるため、障害認定日において2級以上の状態であったとしても、2級以上とは認定されません。障害認定日において2級以上の認定を希望する場合は①の診断書が必要となります。


2. 事後重症による請求の場合 

請求日の診断書(請求日以前3ヶ月以内の現症のもの)を添付します。


3. 初めて障害等級の1級又は2級に該当したことによる請求   

前発傷病、基準傷病それぞれの診断書(請求日以前3月以内の現症のもの)を添付します。前発傷病、基準傷病の診断書が同一のもので、それぞれの障害の状態が分かる場合は、1枚の診断書でも可能ですが、「傷病名」「発病」「初診日」欄は、それぞれの傷病について記入されている必要があります。   

※この確認書は「障害認定日による請求」についての審査請求が制限されるものではなく、認定日請求の審査が厳しくなるわけでもありません。提出がないと、請求日時点の診断書が障害等級に該当しても、これに対する支給処分ができないため、提出するようにします。

請求方法必要な診断書と枚数年金支給開始時期
障害認定日による請求障害認定日以降3ヶ月以内の現症のもの1枚障害認定日の属する月の翌月分から支給
障害認定日による請求 (障害認定日から1年以上経過)障害認定日以降3ヶ月以内の現症のもの1枚と、裁定請求日以前3ヶ月以内の現症のもの1枚障害認定日の属する月の翌月から過去の遡及分をまとめて支給。(5年の時効有)
事後重症による請求裁定請求日以前3ヶ月以内の現症のもの1枚請求日の属する月の翌月分から支給
初めて2級による請求前発障害および基準障害について、それぞれ裁定請求日以前3ヶ月以内の現症のもの各1枚請求日の属する月の翌月分から支給

1.第三者行為

編集中です

 

3 各種書類の作成方法・注意事項

3-1 年金請求書の書き方

基礎手引29

住所

都道府県名から記入する必要はありません。団地名、マンション名等の記入漏れの内容に記載します。

請求書記載の住所と住基上の住所が相違している場合は、「住民基本台帳による住所の更新停止・解除申出書」が必要となることがあります。住民票の住所を移すと、連動して年金原簿に登録の住所が変わってしまうためです。代理人の住所を登録することも可能です。この場合は「津市江戸橋1-1 山田太郎 方」のように記載します。

受取機関

通帳コピーの添付、または金融機関の証明印が必要となります。

ネットバンクについては、次のとおり振込可能なネット銀行と、振込ができないネット銀行があります。国庫金が取り扱えるかどうかで決まります。


加算額の対象者

 受給権発生時において、対象となる子・配偶者(障害基礎は除く)がいるかどうかを確認して記載します。子については通常18歳の年度末(一般的には高校卒業まで)ですが、障害の状態にある場合は、20歳到達まで加算対象となりますので、遡及する場合は特に注意が必要です。

障害の状態に「ある」に○が付されている場合は、子の障害にかかる診断書の添付が必要です。ただし、あとで提出することも可能であるため、その場合はその旨を余白に記載しておきましょう。知的障害の診断書を、小さすぎて書いてもらえない、書いてもらったはいいが認定不能といったケースもあるため、10歳くらいまでの子の診断書は、あとから提出したほうがいいでしょう。

 なお、受給権発生後に加算対象者が現れた場合は、別途「障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届」(様式229-1号)号が必要となります。

 児童扶養手当を受けている子(受けようとしている子)は、この欄に記入してはいけません。

この欄を記入している場合は、請求書裏面の生計維持証明も記入が必要です。

(中面)

公的年金制度等から年金を受けているか

今回の障害基礎年金の請求とは別に、公的年金を受給中(停止中を含む)または、請求中の場合には記入します。

記載例「老齢厚生年金 1150」

配偶者

配偶者がいる場合は記入します。

配偶者の受給している年金に、請求者が加給年金額の支給対象となっている加給年金が加算されている場合は、障害年金が支給決定された場合は支給停止となりますので、「老齢・障害給付 加給年金額支給停止事由該当届」(様式第230号)を添付します。

住民票コード

住民票コードを登録することにより、現況届の提出や住所変更届の提出が不要となります。必ず必要なものではありませんが、住民票コードがわかれば記載しておいた方がよいでしょう。自動的に収録もされますが、最終的に収録されない場合は、毎年誕生月に現況届を提出しなければならず、提出が漏れると支払いが保留となってしまいます。

履歴

 加入したことのある制度に○をし、国民年金については、加入時の住所及び加入期間、被用者年金(厚生年金等)については、事業所等の名称、所在地及び勤務(加入)期間を記入します。

 年金事務所などで被保険者記録を出力し、確認することで記載を省略できます。

なお、共済加入期間がある場合は、「年金加入期間確認通知書」が必要です。

第三者行為

請求傷病が第三者行為(交通事故等)によるものである場合は、「第三者行為事故状況届」及び「確認書」の提出が必要となります。第三者行為によるものか判断に迷う場合(自殺未遂・転倒事故等)は、「第三者行為事故状況届」を添付しておきます。

(裏面)

障害給付の請求事由

どの傷病を、どの方法で請求するのか、受給権及び支分権が発生する非常に重要な箇所となります。

障害給付の請求事由は、1~3のいずれかに必ず○をします。複数○をすることはできません。

2の「事後重症による請求」を選択する場合は、その下段の理由欄を記載します。原則として、2の「症状が軽かった」、3に記載する「診断書がとれない」しか認められません。

請求傷病を複数記入する場合で、請求傷病に相当因果関係がない場合は、それぞれの傷病についての請求事由が分かるように、矢印を引っ張る、傷病名の上に請求事由を明記する等して、それぞれの傷病の請求事由が明確になるように記入します。

基礎てびき36

初めて障害等級の1級または2級に該当したことによる請求を行う場合、基準傷病は、初診日を比較して請求日に最も近い傷病となっていること、及び基準傷病の障害認定日が65歳に達する日の前日以前であることを確認してください。

※ 請求事由欄を訂正する場合は訂正印が必要となります。特に、「障害認定日による請求」から「事後重症による請求」に変更する場合は、必須となります。

過去の障害給付受給状況

過去に障害給付を受けたことがあるときは、その名称と年金証書の基礎年金番号及び年金コード等を記入します。平成6 年の法律改正前に3 年失権した場合も同様です。

傷病名

 請求を行う傷病名を記載します。原則として、請求書・診断書・病歴申立書の傷病名は一致するようにします。

 障害の程度が軽い等により請求傷病としない傷病は、記入しないようにします。

請求事由において「3 初めて障害等級の1 級または2 級に該当したことによる請求」に○をして、初めて2級による請求を行う場合は、必ず対応する複数の傷病名を記載します。

請求書に記入されている傷病のすべてにおいて、病歴状況申立書、診断書、受診状況等証明書(初診医療機関と診断書作成医療機関が異なる場合)を添付することになります。

業務上

傷病の原因が業務上のものであるときは、「傷病の原因は業務上ですか」欄の「はい」に○をして、保険給付の決定状況等がわかる書類の写しを添付します。労災請求中等で添付できない場合は、その旨を記載するか、請求時に伝えます。

なお、新法船員保険での職務上の事由による請求は、日本年金機構での取り扱いとなりません。

生計維持証明

 生計維持とは、年金の取扱上 ①生計同一要件+②収入要件 を満たす場合に認められます。簡単にいえば、いっしょに住んでいて、対象者の収入が850万円以下の場合、生計維持要件を満たします。

①「生計同一関係」欄には、請求者の住所氏名を、対象者欄に、生計が同一である子等を記載します。生計が同一であることの確認は、住民票で行います。

②「収入関係」欄には、加算対象者の氏名を記載し、収入が850万未満であれば、「年収は850万未満ですか」欄の「はい」に○をします。

 「5年以内に850万未満となりますか」の欄は、平成23年の障害年金加算改善法施行に伴い使用することはほとんどなくなりました。上記の収入関係が「いいえ」であり、平成23年3月31日以前に障害認定日があり、さかのぼって障害認定日請求をする場合のみ記載します。


-補足説明-
受給権が発生すると考えられる時点(「障害認定日による請求」の場合は、障害認定日の時点、「事後重症による請求」の場合は、請求書受付日の時点)においての生計維持関係について記入します。
生計維持に関しての詳しい取り扱いは「生計維持関係等の認定基準及び認定の取り扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号)によります。



◆ 障害年金加算改善法について

平成23年の障害年金加算改善法施行に伴い、「おおむね5 年以内」の要件がなくなり、受給権発生時において850万円以上の収入があれば、加算対象とはならず、実際に収入が850万円を下回ったときに加算対象となるため、このときに届出を行います。

このため、平成23年4月1日以降の受給権発生であれば、請求書裏面の生計維持によらず、別紙(様式第107号用)による対応となりますが、今のところ請求書裏面を使用しても大丈夫です。

 

3-2 受診状況等証明書・とれない申立書

 

受診状況等証明書

氏名、傷病名、発病年月日及び傷病の原因又は誘因

・ 氏名、傷病名、発病年月日、傷病の原因又は誘因が記載されていること。

  • 請求傷病と記載された傷病名が異なる場合は、関連性があるか確認します。

・ 複数の傷病が記入されている場合は、それぞれの傷病の発病日、初診日が分かるように記載されていること。

・ 発病年月日、傷病の原因又は誘因が特定できない場合は、「不詳」や「不明」と記載されていること。

発病から初診までの経過

この欄に他の医療機関を受診したことが記載されている場合は、初診日がさかのぼることがあるので、しっかり確認すること。初診日がさかのぼると、病歴状況申立書を再確認する必要があります。(例えば、「紹介され当院受診」や「精査目的で当院受診」など)

初診年月日、終診年月日及び終診時の転帰

 病歴状況申立書に記載されている初診日と終診日が、受診状況等証明書の初診日と終診日と一致していること。

初診より終診までの治療内容及び経過の概要

 治療内容(薬の処方状況、検査結果等)が記載されていること。

記載根拠

 記載根拠のいずれかに○が付されていることを確認し、記載根拠の複数に○が付されている場合は、どの部分がどの根拠に基づいて記載されたものであるかが分かるようになっていること。

(4)に○が付されている場合は、次に受診した医療機関の受診状況等証明書が添付されていること。


証明欄

証明書を作成した医療機関や医師の氏名が記載されていること、医師の印鑑が押印されていること。   


受診状況等証明書が添付できない理由書

傷病名

その医療機関で診断された傷病名が記載されていること。

医療機関名、医療機関の所在地、受診期間】

医療機関名、医療機関の所在地、受診期間が記載されていること、記憶が曖昧な場合は、「○○市△△町の病院」や「○○市内の診療所」と可能な範囲で記載されていること。受診期間についても「昭和○○年△月頃」や「平成○年春頃」と可能な限り記載されていること。

受診状況等証明書が添付できない理由、確認年月日、確認方法】

理由の1~3のいずれかに○が付されていること、「3.その他の理由」に○が付されている場合は、その理由が適正なものであること。終診から5年を経過していない場合は、医療機関に受診状況等証明書が作成できないか確認すること。

確認方法は、a~cのいずれかに○が付されていること、「cその他」に○が付されている場合は、確認方法が記載されていること。

申立日

申し立てた日、住所、氏名が記載されていること。

受診状況等が確認できる参考資料(写)の添付

初診日の参考となる資料が保管されている場合は、該当する記号を○で囲んで、そのコピーを添付してもらうこと。

3-3 病歴状況申立書(病歴・就労状況等申立書)

病歴状況申立書は、発病から初診までの経過、その後の受診状況や就労状況等について記載する書類となります。

病歴状況申立書は、障害の状態の認定、初診日を確定する上で重要な補完資料となりますので、傷病の発病から請求までの経過がわかるように、診断書や受診状況等証明書と矛盾しないようにできるだけ具体的に、かつ要点をまとめて記入するようにします。必要以上に長々と書くことは、書く側にも負担であり、審査側にとっても状況がつかみにくいものとなってしまいます。

原則として本人が記載しますが、本人が記載することが困難な場合も多々ありますので、その場合は家族や代理人が本人に代わって記載することもできます。

1枚で書ききれない場合は、2枚目を利用して記載する等します。必ず1枚に収めなければならないわけではありません。

請求傷病が複数ある時はそれぞれの傷病ごとに作成します。

障害の原因となった傷病の他に相当因果関係の有無を確認する必要がある傷病(診断書⑤欄「既存障害」、診断書⑥欄「既往症」に記載されている傷病等)がある場合にも、傷病ごとに病歴状況申立書を記載、少なくともその発病からの状態が分かるように記載することが求められます。例えば、前発(既往)「脳梗塞」と後発「脳出血」などは、相当因果関係の有無を確認する必要があるため、既往症が発病したときからの病歴及び受診状況等を記載します。 この段落H24障厚44 mix

傷病名、発病日、初診日

年金請求書の傷病名、傷病の発生した日及び初診日と、病歴状況申立書の傷病名、発病日、初診日が一致するように記載します。

請求傷病が複数ある場合は、傷病ごとに病歴状況申立書を複数分作成します。

発病したとき、発病から初診までの状況

発病した時の状況、発病から初診までの状況を記入します。

先天性疾患については、出生時から初診までの状況を記入します。出生時から初診までの期間、発病から初診までの期間が長い場合は、3年から5年ごとに区切って記入します。書ききれない場合は「治療の経過」に記入、用紙を複数枚使用するなどして、状態がよくわかるように記入します。

例えば、発達障害の場合、単に受診していなかったというだけで初診が決まるのではなく、初診までの状況がどのようなものであったか等を確認して決定が行われることになります。

治療の経過

受診していない期間についても記入する必要があります。 

受診していない期間については、受診しなかった理由、自覚症状の程度、日常生活の状況等を詳しく記入するようにします。再発か継続かの判断材料とされます。

医療機関ごとに区切って記入します。

1つの医療機関での受診歴が長い場合や受診していない期間が長い場合は、3年から5年ごとに区切って記入します。

◆ 障害認定日の就労・日常生活状況等

障害認定日請求の場合は、障害認定日頃の状態を記入します。事後重症による請求の場合は、この欄を記入する必要はありません。

現在(請求日)の就労・日常生活状況等

事後重症による請求の場合は、現在(請求日)の状態を記入します。

1年以上さかのぼって障害認定日請求をする場合は、現在(請求日)の状態を記入します。

日常生活に不便を感じていること

障害に関して不便に感じていることを記入します。例えば、食事や入浴、外出時において不便に感じていることがあれば、その状況などを記入します。

身体障害者手帳等の交付状況等

身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等の交付を受けている場合は記入をします。

申立て欄

申立て年月日、請求者氏名、電話番号が記入し、代筆の場合は、代筆者氏名と続柄を記入します。

 

3-4 診断書の作成

診断書は、請求者の障害の程度を確認するための重要な客観的資料となります。そのため、障害給付の診断書は、具体的な障害の程度が明確に判断できるよう次の8種類に分かれています。

 1つの傷病でもその障害の現れる部位、状態が多岐にわたるケースがありますので、請求者の障害の状態が一番的確に記載できて、最も症状にあてはまる様式の診断書を、ケースによっては2種類以上の診断書を提出します。2種類以上の障害があるからといって、必ず全ての診断書を提出する必要もなく、単独の障害だけで1級になるような場合は単独での請求をするほうが時間や費用がかかりません。

どの診断書を使うべきか判断に迷う傷病・症状もありますが、提出先に尋ねても一般的にはこの傷病はこの診断書の提出が多いというような内容を教えてくれるだけです。最終的には請求者が医師とよく相談をして、提出する診断書を決めることになります。

 指定の病院や医師等はありませんが、精神の診断書だけは原則として精神科等の医師に記載してもらう必要があります。(詳細は後述の「精神」を参照)

 精神の診断書の日常生活能力等の判定は、単身生活を想定して記載してもらいます。医師には日常生活の状況等を的確に伝え、適切な判断をしていただくことが重要となります。

◆ 診断書の種類

様式番号診断書の種類主な傷病
120号の1白内障、緑内障、糖尿病性網膜症等の眼の傷病
120号の2聴覚メニエール病、感音性難聴等の聴覚の傷病
鼻腔機能外傷性鼻科疾患等の鼻腔機能の傷病
そしゃく・嚥下機能、言語機能咽頭摘出術後遺症、脳梗塞等のそしゃく・嚥下機能、言語機能の傷病
120号の3肢体関節リウマチ、脳梗塞、脊髄損傷等の肢体の傷病
120号の4精神統合失調症、うつ病、認知症等の精神の傷病
120号の5呼吸器疾患慢性気管支炎小、肺結核等の肺の傷病
120号の6-(1)循環器疾患心筋梗塞、狭心症、僧帽弁閉鎖不全症等の心臓の傷病
120号の6-(2)腎疾患慢性腎不全、ネフローゼ症候群等の腎臓の傷病
肝疾患肝がん、肝硬変等の肝臓の傷病
糖尿病糖尿病、糖尿病性と明示された合併症等の糖尿病の傷病
120号の7血液・造血器・その他白血病、悪性新生物(がん)、クローン病、後天性免疫不全症候群(エイズ)等

2 診断書に共通する留意事項

 次のポイントを確認します。

1.診断書に係る診断書の作成年月日、医療機関の名称及び所在地、診療担当科名、医師の氏名及び押印の漏れがないか。

2.診断書に記入されている受診者の氏名、生年月日、性別及び住所が年金請求書に記入されている氏名等と一致するか。

3.診断書の①欄~⑨欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)に記入漏れがないか。

4.障害の状態(令和 年 月 日現症)欄について、記入漏れがないか。

5.診断書の「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」に、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、またどの程度の労働ができるのか等の記入がされているか。

6.「予後」が記入されているか。たとえ診断時点において断定できない場合であっても、「不詳」等の記入が必要です。

7.診断書と年金請求書及び病歴申立書に記入されている発病、初診日に相違がないか。

8.パソコン等で作成された診断書で、片面印刷のため2枚になる場合は、割り印があるか、またはそれぞれに医療機関の名称、所在地、診療科目、医師の自筆の署名、捺印があるか。

9.診断書を訂正した場合は、訂正個所に作成医師の訂正印が押印されているか。

10.診断書の現症年月日が、診断書の作成年月日(診断書の欄外の日付)よりも後になっていないか。

診断書の様式は、傷病名・障害が現れている部位・状態からみて合致しているか。

訂正されている箇所には、訂正印があるかどうか。

 

診断書の共通事項(様式により番号が異なります)

  • 欄「障害の原因となった傷病名」

障害年金を請求する傷病名が記載される欄となります。傷病名に特に制限はありません。

  • 欄「傷病の発生年月日」
  • 欄「①のために初めて医師の診療を受けた日」

非常に重要な欄となります。診療録で確認できればその日付を記載し、「診療録で確認」に○がされます。前医がある場合の初診日の確認は難しい場合が多いため、その場合医師は問診により日付を記載し、「本人の申立て」に○と申立ての日付を記載することになります。

  • 「傷病の原因又は誘因」

  傷病の原因や誘因がある場合に記載されます。例えば脳梗塞に対して「心房細動」や、事故が原因であれば「交通事故」のように記載されます。病歴申立書にはその原因又は誘因についての内容が記載されている必要があり、場合により受診状況等証明書が必要となります。「初診年月日」欄は、診療録などで確認できる場合に記載されます。

⑤欄「既存障害」

⑥欄「既往症」 

既存の障害や既往症があれば記載されることになります。①に記載される傷病名と相当因果関係のある傷病等が記載される場合は、その傷病について確認が必要となります。

⑦欄「傷病が治った(症状が固定して治療の効果が期待できない状態を含む。)かどうか」

   傷病が治った状態か、治っていない状態なのか、その状態が記載される欄ですが、症状固定の判断や、障害手当金支給において重要な欄となります。「治った日」が記載される場合は「確認」「推定」のどちらかに○が必要ですが、記載漏れの多い箇所となっているため注意が必要です。

⑧欄「診断書作成医療機関における初診時所見」

   初診時の所見が記載される欄ですが、「以前に○○病院で受診し」という内容が記載されることが多く、このような記載があれば必ず病歴申立書にこの医療機関での受診状況が記載されていなければなりません。

⑨欄「現在までの治療の内容、期間、経過、その他の参考となる事項」

   どのような状況なのかが経緯をふまえて記載される欄です。障害認定医もこの欄を確認し、傷病の治療経緯や状態把握を行います。


⑪欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

   日常生活の活動能力がどの程度なのか、労働はできるのか等が記載されます。障害等級の決定において、日常生活能力・労働能力は障害認定基準にも記載があるとおり重要な要素となっています。労働ができる場合は、どの程度の労働ができるのか等を記載してもらいます。

⑫欄「予後」

   今後の傷病の状態の見込みとして、固定、徐々に悪化、不良等の内容が記載されます。障害等級の決定や、次回診断書提出日を決める判断材料等となります。

「現症日」欄

   診断内容が記載されている箇所は、必ず必要となります。医師も記載を漏らすことが多い欄なので、記載があるかどうか、その日付が障害年金請求で求められる日付となっているかどうか、必ず確認を行います。


3-4-1 眼

ポイント

 眼の障害認定は、主に視力・視野によって決定されることがほとんどです。視力については、数字で等級が定められているため、等級はわかりやすいものとなっています。

◆ 視力(矯正での測定結果です)

等級障害の状態
1級視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの
視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
2級視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの
視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
3級視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの
障害手当金視力の良い方の眼の視力が0.6以下のもの
一眼の視力が0.1以下のもの

視野については、障害認定基準が改正され、次のようになりました。



自動視野計に基づく認定基準

1級両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
2級両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
3級両眼開放視認点数が70点以下のもの
障害手当金両眼開放視認点数が100点以下のもの
両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

ゴールドマン型視野計に基づく認定基準

1級両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
2級両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの
3級両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のもの
障害手当金Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの両眼による視野が2分の1以上欠損したもの




主な傷病名 

白内障、緑内障、プドウ膜炎、眼球萎縮、癒着性角膜白斑、網膜脈絡膜萎縮、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、網膜は<離 など

留意事項

 診断書①欄~⑨襴

診断書①欄から⑨欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要となります。)

◆ 診断書⑩欄「障害の状態(令和  年  月  日 現症)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、現症年月日が記載されていること。また、次の項目についても確認すること。

* 視力や視野の検査値及び所見が記載されていること。

* 「矯正視力」は、矯正眼鏡又はコンタクトレンズを使用することにより得られた視力が記載されていること。視力が矯正できない場合は、「矯正不能」と記載されていること。

* 視野障害がある場合は、ゴールドマン視野計のI/2及びI/4の視標(ゴールドマン視野計以外の測定によるときは、これに相当する視標)で計測した視野が記載され、余白にどの視標で測定したものかわかるように記載されていること。

◆ 診断書⑪欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

 

◆ 診断書⑩欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」等と必ず記載されていること。

◆ 診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記載漏れがないこと。

-補足説明-
網膜色素変性症や先天性の眼疾患については、参考様式〔先天性障害(網膜色素変性症等):眼用〕を添付します。


3-4-2 聴覚

ポイント

 補聴器等は装着しない状態で測定をしてもらいます。

 人工内耳を装着している場合は、外すことができれば外す、スイッチがあればオフの状態にする等の状態で測定してもらいますが、できない場合はそのままの状態で測定し、診断書には「人工内耳装着の状態で測定」等の記載をしてもらいます。

◆ 聴力レベルと障害等級

等級障害の状態
1級両耳の聴力レベルが100 デシベル以上のもの
2級両耳の聴力レベルが 90 デシベル以上のもの
両耳の平均純音聴力レベル値が80 デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの
3級次のいずれかに該当するもの ①両耳の平均純音聴力レベル値が70 デシベル以上のもの ②両耳の平均純音聴力レベル値が50 デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの
障害手当金一耳の平均純音聴力レベル値が80 デシベル以上のもの

両耳の平均純音聴力レベル値が「90デシベル未満」の場合は、「最良語音明瞭度」の記載の数値により、2級または3級に該当しますので、記載してもらうようにします。ただし、「最良語音明瞭度」は、測定できる医療機関と、測定できない医療機関があるため、注意が必要です。

主な傷病名

<聴覚障害> メニエール病、感音性難聴、突発性難聴、頭部外傷又は音響外傷による内耳障害、混合性難聴、

<そしゃく・嚥下機能・言語機能障害> 喉頭腫瘍、咽頭摘出術後遺症、上下顎欠損、脳血管障害等による言語機能障害 など

留意事項

診断書①欄~⑨欄

 

診断書①欄から⑨欄の記載事項(障害の原因となった傴病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

診断書⑩欄「障害の状態(令和  年  月  日 現症)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となるので、現症年月日が記載されていること、また、次の項目についても確認すること。

聴覚障害

 * 聴力レベルは、補聴器を使用しない状態で、オージオメータによって測定されたデシベル値で記載されていること。

 * 両耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル未満の場合は、最良語音明瞭度が記載されていること。(これと聴力の組み合わせにより、2級または3級に該当する場合があるため。)

平衡機能障害

 * 平衡機能にかかる状態及び症状所見・検査所見が記載されていること。

そしゃく、嚥下機能、言語機能障害

 * そしゃく、嚥下機能、言語機能障害の状態及び症状所見・検査所見が記載されていること。

  (注)喉頭全摘出手術を施した日が、その原因となった傷病の初診日から起算して1年6月を経過する前である場合は、その日が障害認定日となります。

診断書⑪欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

 障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書⑫欄「予後」

 診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

-補足説明-

先天性の聴力疾患については、参考様式〔先天性障害:耳用〕を添付します。


3-4-3 肢体

ポイント

 肢体の障害は「①上肢の障害」、「②下肢の障害」、「③体幹・脊柱の機能の障害」「④肢体の機能の障害」に区分され、最も適当である1つの区分の認定基準により判断されます。

肢体の適用条件と認定の重点項目

区分適用条件認定の重点項目
①上肢の障害片腕・両腕等、上肢のみの機能障害関節可動域及び運動能力
②下肢の障害片足・両足等、下肢のみの機能障害関節可動域及び運動能力
③体幹・脊柱の機能の障害体幹(高度体幹麻痺を後遺した脊髄性小児麻痺、脳性麻痺等)・脊柱(脊柱の脱臼骨折又は強直性脊椎炎等によって生じるもの)の機能障害日常生活動作  
④肢体の機能の障害上肢及び下肢などの広範囲にわたる機能障害(四肢、一上肢+一下肢等)日常生活動作

また、平成24年9月1日より診断書の書式変更があり、肢体の診断書の会話状態を記載する欄が削除されました。整形外科の医師等から専門外であるという意見があったためです。このため、言語機能の障害についても審査を希望する場合は、別途言語機能の障害の診断書(様式120号の2)とあわせて2種類の診断書をを提出することになります。

人工骨頭、人工関節について

人工骨頭、人工関節をそう入置換した場合は3級とされます。2関節以上そう入置換を行っても、それだけで上位等級(2級以上)にはなりません。そう入置換してもなお障害の程度が上位等級(2級以上)に該当する場合にはじめて上位等級に認定されます。

 ただし、この場合であっても、人工骨頭、人工関節を最後にそう入置換してから原則として6ヶ月以上経過後の診断書でない場合は、手術前後の疼痛、筋力低下が回復していなかったり、状態が安定しなかったりするため、上位等級への認定が困難となるので注意が必要です。

主な傷病名

上肢又は下肢の離断(切断)、上肢又は下肢の外傷性運動障害、脳梗塞、脳出血、重症筋無力症、関節リウマチ、脊髄損傷、筋ジストロフィー、変形性股関節症、変形性膝関節症、脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)、線維筋痛症 など

留意事項

○ 診断書①欄~⑩欄

診断書①欄から⑩欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、 障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

「障害の状態(令和 年 月 日 現症)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、現症年月日が記載されていること。

◆  診断書?欄「切断又は離断・変形・麻痺」、診断書?欄「握力」

上肢・下肢の切断(離断)、変形、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、脳血栓症等)による機能障害がある場合は、この欄が記載されていること。

(注)上肢、下肢の切断又は離断、欠損による機能障害の場合は、その原因(要因)となった傷病の初診日から起算して1 年6 月を経過する前である場合は、肢体の切断又は離断、欠損の日をもって障害認定日となります。

診断書⑫欄「脊柱の障害」

脊柱の障害の場合は、この欄が記入されていること。

診断書⑬欄「人工骨頭・人工関節の装着の状態」

変形性股関節症等により、人工骨頭や人工関節の挿入置換術を行っている場合は、この欄が記載されていること。

(注)人工骨頭や人工関節の挿入置換術を行っている日が、その施術の原因(要因)となった傷病の初診日から起算して1年6月を経過する前である場合は、挿入置換術日が障害認定日となります。

診断書⑮欄「手(足)指関節の他動可動域」

この欄については、障害が右(左)の場合は、健側についても必ず記入されていること。(健側と対比して認定するため。)健側(けんそく)とは、麻痺や障害などがない部位側のことをいいます。

「障害の状態(令和 年 月 日 現症)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、現症年月日が記載されていること。

診断書⑯欄「関節可動域及び筋力」

障害が右(左)の場合は、健側についても必ず記載されていること。(健側と対比して認定するため。)

また、欄外の「股関節屈曲値」は、1又は2のいずれの測定によるものか○が付されていること。

診断書⑰欄「四肢長及び四肢囲」

障害が右(左)の場合は、健側についても必ず記載されていること。(健側と対比して認定するため。)

診断書⑱欄「日常生活における動作の障害の程度」

a~q までは、「○」、「○△」、「△×」、「×」のいずれかの記号が記載されていること、r~t までは、ア~エの該当する状態に○が付されていること、補助用具は使用しない状態で記載されていること。

診断書⑲欄「補助用具使用状況」

補助用具を使用している場合は、その使用状況が記載されていること。

診断書⑳欄「その他の精神・身体の障害の状態」

該当する症状がある場合は、記入されていること。言語障害がある方には、言語障害の症状を確認し、聴覚等の診断書の有無について確認する必要があること。

診断書21欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書22欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記入漏れがないこと。

◆ 人工骨頭、人工関節を挿入置換した場合、術後間もない場合は症状が安定していないため、たとえ状態が悪くても2級以上に認定されることは難いため、症状の安定(6ヶ月程度)を待ってからの請求を検討してください。ただし、3級狙いであるときを除きます。

◆ 先天性股関節疾患(臼蓋形成不全を含む)については、参考様式〔先天性股関節疾患(蓋形成不全を含む)用〕を添付します。

◆ 請求傷病が「線維筋痛症」の場合は、重症度分類試案(ステージⅠ~Ⅴ)が記載されていること〔重症度分類試案のみの照会は101ページ参照〕。

◆ 「脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)」の場合は、日中(起床から就床まで)の臥位(臥床)時間が診断書に記載されていること。


3-4-4 精神

ポイント

特に重要となる欄は、「3 日常生活能力の程度」となります。

 障害等級の目安は次のとおりです。

精神障害の障害等級と日常生活能力の程度の相関性

障害の等級日常生活能力の程度
3級非該当(1)精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
3級(2)精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
2級
(4)精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
1級
(5)精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。常時の援助が必要である。



知的障害の障害等級と日常生活能力の程度の相関性

障害の等級日常生活能力の程度
3級非該当(1) 知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
3級(2) 知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3) 知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
2級
(4) 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
1級
(5) 知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

てんかんでの請求について

てんかんについては、薬物療法によって完全に消失するものから、難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないものまで様々ありますが、ポイントは次の①と②の両方が一定以上の障害状態であるかどうかです。

①てんかん性発作の程度と回数

②日常生活能力の程度

多いケースは、治療・投薬によってもてんかん性発作が生じるため、①の要件は満たすものの、日常生活能力の程度が良いため、②の条件を満たさず障害等級に該当しないものです。②の条件は主に診断書の「3 日常生活能力の程度」が参考にされます。

また、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にはなりません。

人格障害・神経症について

人格障害、神経症は、原則として認定の対象となりませんが、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱われます。

ICD10による対象疾病

ICD10とは、死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関(WHO) によって公表された分類で、現在最新のものは第10版となっています。精神の診断書「①傷病名」の欄の下のところに、ICD-10コードを記載する欄があります。

ICD10 第5章 精神及び行動の障害 (F00-F99)

ICD-10 コード内容障害年金との関連
F00-F09症状性を含む器質性精神障害 対象疾病
F10-F19精神作用物質使用による精神及び行動の障害対象疾病であるが、給付制限に該当する可能性あり
F20-F29統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 対象疾病
F30-F39気分[感情]障害対象疾病
F40-F48神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 原則として対象外
F50-F59生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群 明確な基準なし
F60-F69成人の人格及び行動の障害 原則として対象外
F70-F79知的障害〈精神遅滞〉 対象疾病
F80-F89心理的発達の障害 対象疾病
F90-F98小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 対象疾病
F99-詳細不明の精神障害 明確な基準なし

診断書を作成できる医師

精神の障害用の診断書は、精神保健指定医又は精神科を標榜する医師により作成されている必要があります。ただし、てんかん、知的障害、発達障害、認知症、高次脳機能障害などは、小児科、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科、老年科などでそれぞれ専門医師として従事しているのであれば、精神科の医師でなくても作成することができることになっています。

実務上、上記以外の精神の傷病についても、必ず精神科等の医師が記載したものでなければ認められないというわけではなく、受診状況は人により様々であるため、精神科等の医師に作成してもらうことが困難で、主治医に精神の診断書を作成してもらえるような場合は、認められる場合もあります。門前払いというわけではありません。

主な傷病名

統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、てんかん性精神病、知的障害、アルツハイマー病、頭部外傷後遺症、広汎性発達障害、てんかん、 など

留意事項

診断書①欄~⑨欄

診断書①欄から⑨欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

また、次の項目についても確認すること。

* 診断書?欄に「ICD-10コード」が記載されていること。

* 「ア 発育・養育歴」、「イ 教育歴」、「ウ 職歴」及び「エ 治療歴」が、記載されていること。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

「エ 治療歴」に記載された医療機関、治療期間と、病歴申立書の記載に相違がないようにします。

ワンポイント!

ICD-10コード(国際疾病分類)は、精神および行動の障害であれば「F」で始まり、神経系の疾患であれば「Gで始まるコードのことです。

例えば、統合失調症であれば「F20」や「F20.0」となり、てんかんであれば「G40」や「G40.0」と記載されます。

診断書⑩欄「障害の状態(令和 年 月 日 現症)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となるので、現症年月日が記載されていること。また、「ア 現在の病状又は状態像」「イ 左記の状態についてその程度・症状」「ウ 日常生活状況」(診断書裏面)は、必ず記載されていること。

「ウ 日常生活状況」は、1人暮らしを想定して記載されているか確認します。

* てんかんは、てんかん発作のタイプと頻度が記載されていること。
てんかんの発作回数は、過去2年間の状態あるいは、おおむね今後2年間に予想される状態を記入することになります。

◇ てんかん発作のタイプ

 A :意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

 B :意識障害の有無を問わず、転倒する発作

 C :意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作

 D :意識障害はないが、随意運動が失われる発作

診断書⑩欄「障害の状態(令和 年 月 日 現症)」(つづき)

「エ 現症時の就労状況」については、記載されていなくても不備としないこと。また、「カ 臨床所見(心理テスト(知能障害の場合には、知能指数、精神年齢)を含む。)」には、請求する傷病が「知的障害」、「発達障害」の場合は、知能指数(IQ)または精神年齢が記載されていること。また、検査を行った日についても記載されていること。

診断書⑪欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書⑫欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

診断書⑬欄「備考」

「①障害の原因となった傷病名」に神経症圏(ICD-10コードが「F4」で始まる傷病)の傷病が記載されている場合で、「統合失調症」、「統合失調症型障害」、「妄想障害」、「気分(感情)障害」の病態を示しているときは、その旨と示している病態のICD-10コードを記載してもらうことが必要です。

診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記入漏れがないこと。

◆ 高次脳機能障害による失語障害があるときは、「言語機能の障害用」の診断書が必要になります。



-補足説明-

精神の障害用の診断書は、精神保健指定医又は精神科を標榜する医師により作成されている必要があります。
ただし、てんかん、知的障害、発達障害、認知症、高次脳機能障害などは、小児科、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科、老年科などでそれぞれ専門医師として従事しているのであれば、精神科の医師でなくても作成することができます



3-4-5 呼吸器

在宅酸素療法について

在宅酸素療法とは、傷病は安定しているものの、体内に酸素を十分取り込めない場合に、長期にわたって自宅で酸素吸入をする治療法です。常時(24 時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3 級となります。臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては2級以上に認定されます。

主な傷病名

肺結核、じん肺、気管支喘息、慢性気管支炎、膿胸、肺線維症、肺化のう症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、けい肺(これに類似するじん肺を含む) など

留意事項

診断書①欄~⑨欄

診断書①欄から⑨欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

診断書⑩欄「共通項目」

呼吸器疾患の必須項目となっているので、呼吸不全の状態がない場合でも記載されていること。また、次の項目についても確認すること。

* いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となるので、必ず検査年月日((令和 年 月 日)赤字の部分)が記載されていること。

* 動脈血ガス分析値は安静状態の計測値であり、酸素吸入施行中の値であるときは、酸素吸入量が記載されていること。

* 在宅酸素療法を施行している場合は、その開始日、施行時間、酸素吸入量が記載されていること。

※ 呼吸器系結核、肺化のう症、けい肺(これに類似するじん肺を含む)の疾病は、X線フィルムの添付が必要です。CD等で提出する場合は、必要と思われる画像をあらかじめ印刷しておく方が良いでしょう。

診断書⑪欄「肺結核症」、診断書⑫欄「じん肺」、診断書⑬欄「気管支喘息」、診断書⑭欄「その他の障害又は症状の所見等」

請求する傷病に応じて必要な所見、検査結果が記載されていること。

診断書⑮欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書⑯欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記載漏れがないこと。

◆ 呼吸器疾患については、参考様式〔肺の病気用〕を添付します。


3-4-6 循環器

ポイント

「心疾患」の認定でポイントになるのは、左室駆出率(EF値)です。できるだけ記載してもらうようにします。

 異常検査所見の1つとして「BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml 相当を超えるもの」という項目がありますが、NT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)の測定値であっても認定は可能となります。具体的な数値は示されていませんが、医学的に判断されることになります。

主な傷病名

<心疾患>

僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、慢性虚血性心疾患、冠状動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞、胸部大動脈瘤解離

<高血圧>

悪性高血圧、高血圧性心疾患、肺動脈性肺高血圧症 など

留意事項

診断書①欄~⑩欄

診断書①欄から⑨欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

診断書⑪欄「循環器疾患」

「1 臨床所見」及び「2 一般状態区分」の欄が記載されていること。「3 検査所見」及び「4 その他の所見」については、必要と思われる項目が記載されていること。

心カテーテル検査等については、患者への身体的負担が大きい検査は必須ではなく、過去に行った当該検査結果の参考記載でも良いこととなっています。

また、検査所見の各測定年月日は、できりだけ現症日に近い日を記載してもらいます。

* いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となるので、必ず検査年月日((令和 年 月 日)赤字部分)が記載されていること。

* 心疾患は、心電図のコピーが添付されていること。

* 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)、人工弁、人工血管、心臓移植、CRT(心臓再同期医療機器)及びCRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着した場合は、心臓ペースメーカー等を装着・施術した日以後の現症日が記入されていること。

(注)心臓ペースメーカー等を装着・施術した場合は、装着日・施術日がその原因(要因)となった傷病の初診日から起算して1 年6 月を経過する前である場合は、心臓ペースメーカー等の装着日・施術日が障害認定日となります。

(注)人工弁(弁置換術)には、機械弁、生体弁、ホモグラフトの3種類があります。

弁形成術に使用する人工弁輪は人工弁ではないため、上記の取り扱いには該当しません。

診断書⑫欄「疾患別所見」

「1 不整脈」、「2 先天性心疾患・弁疾患」、「3 虚血性心疾患」、「4 高血圧症」及び「5 その他の循環器疾患」については、必要と思われる項目が記載されていること。

診断書⑬欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書⑭欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記載漏れがないこと。

◆ 心疾患については、参考様式〔心臓の病気用〕を添付します。


3-4-7 腎疾患 肝疾患 糖尿病

ポイント

 圧倒的に多いのが人工透析を始めたことによる請求です。また、この場合糖尿病性のものが多く、初診日は相当古い日になることがほとんどです。診断書や受診状況等証明書等に、本人申し立ての初診より前の記載がないかの確認が必須となります。

主な傷病名

<腎疾患> 慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、慢性腎不全 など

<肝疾患> 肝硬変、多発性肝腫瘍、肝癌 など

<糖尿病疾患> 糖尿病、糖尿病を原因とする合併症 など

留意事項

診断書①欄~⑩欄

診断書①欄から⑩欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

診断書⑪欄「一般状態区分表(令和 年 月 日)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となるので、必ず現症年月日(令和 年 月 日)が記載されていること、また、ア~オのいずれかに○が付されていること。

診断書⑫欄「腎疾患(令和 年 月 日現症)」

「⑩計測」、「⑪一般状態区分表」及び「⑫腎疾患」の欄が記載されていること。また、腎移植を受けている場合は、「4その他の所見」に腎移植の移植日が記載されていること。

(注)人工透析療法施行中の場合は、その原因(要因)となった傷病の初診日から起算して1 年6月を経過する前に、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3 月を経過した日が到来した場合は、その到来日が障害認定日となります。

    この場合、検査成績等は、人工透析療法後の数値等が記載されていること。 H24障厚手引P37

診断書⑬欄「肝疾患(令和 年 月 日現症)」

「⑩計測」、「⑪一般状態区分表」及び「⑬肝疾患」の欄が記載されていること。また、肝移植を受けている場合は、「7 その他の所見」の肝移植の有無と併せて移植日が記載されていること。

診断書⑭欄「糖尿病(令和 年 月 日現症)」

「⑩計測」、「⑪一般状態区分表」及び「⑭糖尿病」の欄が記載されていることを確認してください。

診断書⑯欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書⑰欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記載漏れがないこと。

◆ 腎疾患、肝疾患又は糖尿病については、それぞれ参考様式〔腎臓・膀胱の病気用〕〔肝臓の病気用〕〔糖尿病用〕を添付します。


3-4-8 血液・造血器 その他

主な傷病名

悪性新生物(がん)、再生不良性貧血、骨髄性白血病、血友病、クローン病、直腸腫瘍、膀胱腫瘍、ヒト免疫不全ウイルス感染症・その続発症、慢性疲労症候群、化学物質過敏症 など

留意事項

診断書①欄~⑩欄

診断書①欄から⑩欄の記載事項(障害の原因となった傷病名、初めて医師の診療を受けた日等)は、障害の状態にかかる診断記録とともに、年金の審査で不可欠な事項となるので、記載洩れがないこと。

診断書②と③欄の「本人申立て」に○が付されている場合は、( )内にその申立て年月日が必ず記載されていること。(本人の申立てが、診断書作成医療機関の初診時問診で確認できるのか、診断書を持参したときの申立てなのか判断するために必要です。)

診断書⑫欄「一般状態区分表(令和 年 月 日)」

いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、必ず現症年月日(令和 年 月 日)が記載されていること、ア~オのいずれかに○が付されていること。

診断書⑬欄「血液・造血器(令和 年 月 日現症)」

傷病名が再生不良性貧血や骨髄性白血病等の場合は、この欄が記載されていること。また、いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、現症年月日が記載されていること。

診断書⑭欄「免疫機能障害(令和 年 月 日現症)」

傷病名がヒト免疫不全ウイルス感染症及びその続発症の場合は、この欄が記載されていること。また、いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、現症年月日が記載されていること。

※ 各般の事情により具体的な病名が記載されない場合がありますが、個人情報の保護には、十分留意した事務処理を要すること。

診断書⑮欄「その他障害(令和 年 月 日現症)」

傷病名が直腸腫瘍や膀胱腫瘍等の場合は、この欄が記入されていること。また、いつの時点の障害の状態であるか判断するうえで重要な事項となりますので、現症年月日が記載されていること。

(注)人工肛門、新膀胱の造設または尿路変更術を施した場合は、その施術の原因(要因)となった傷病の初診日から起算して1 年6 月を経過する前である場合は、施術を行った日が障害認定日となります。

   人工肛門等は一時的な造設もあるため、いったん造設したとしても閉鎖を行った場合は、障害認定日の特例等に該当しない取り扱いがされています。

 

診断書⑯欄「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」

障害の程度の認定にあたって重要な意味を持ちますので、現症時において日常生活がどのような状況であるのか、また、どの程度の労働ができるのか等が必ず記載されていること。

診断書⑰欄「予後」

診断時点において断定できない場合にあっても、「不詳」と必ず記載されていること。

診断書作成年月日等

診断書の作成年月日等の記載漏れがないこと。

◆ 求傷病が「化学物質過敏症」の場合は、化学物質過敏症の照会様式を添付します。

「慢性疲労症候群」の場合は、重症度分類(PS0~PS9)が記載〔重症度分類のみの照会は102ページ参照〕されている必要があります。




3-5 診断書についてのその他

当時の医師が転勤等でいない場合

診断書は原則として、現症日時点で診察を受けていた医師に記入してもらいます。

当時の医師が転勤や退職等で診断書の作成を依頼できない場合は、他の医師に診療録をもとに記入してもらい病院が管理している診療録の証明書として作成してもらうことになりますので、診断書の医師署名欄にある「上記のとおり、診断します」とあるのを、「上記のとおり、診療録に記載されてあることを証明します」と訂正し、病院が管理している診療記録の証明書として作成を後任の医師に依頼します。(医師は自ら診療していない過去の時点における診断書を交付することは出来ないようです)。診療録の証明書であっても、その当時の傷病の状態、障害の程度が確認出来れば、診断書に代わる書類となります。




第4章 詳細解説

1 病状別解説

1-1 知的障害と発達障害

 知的障害は、障害基礎年金の中で最も請求が多くなっています。原則として生来として扱われるため、初診日は出生時(生年月日)が初診日とされます。多くの場合、療育手帳(都道府県等によって名称は異なります)が交付されているので、請求の際に写を添付するとともに、病歴申立書には出生時からの状態を記載します。

 このように取り扱われるため、初めての受診が厚生年金加入期間中であっても、障害基礎年金での取り扱いとなります。

 なお、20歳時点が障害認定日となるため20歳到達時に認定日請求を行うのが一般的ですが、20歳到達から相当期間経過後に請求をする場合、障害認定日時点の診断書がとれないことがよくあります。知的障害の現症状から認定日の状態が明らかに判断できる場合は障害認定日時点に遡及することができるとされていますが、明確な基準はなく、「知的障害者施設の在園証明書」や「市役所等が発行した障害証明書」も診断書の代わりとはならないとされているため、遡及期間や障害の程度にかかわらず一律に遡及されることは困難となっています。

 発達障害については、知的障害を伴う場合は「知的障害」として扱われることが多いのですが、知的障害を伴わない場合であって、発達障害の症状により初めて受診した日が20歳以降であれば、初めて受診した日が初診となります。このため、厚生年金に加入中であれば障害厚生年金で請求を行うことになりますが、診断書や受診状況等証明書に幼少期からの知的障害が疑われる記載がある場合等は、病歴・就労状況等申立書には幼少期からの状態を記載するようにします。

また、知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合は、次のとおり取り扱われます。 

発達障害や知的障害と精神疾患が併発する場合の一例

 前発疾病後発疾病判定
A発達障害うつ病同一疾病
B発達障害神経症で精神病様態同一疾病
Cうつ病 統合失調症発達障害診断名の変更
D知的障害(軽度)発達障害同一疾病
E知的障害うつ病同一疾病
F知的障害神経症で精神病様態別疾病
G知的障害 発達障害統合失調症前発疾患の病態として出現している場合は同一疾患(確認が必要)
H知的障害 発達障害その他精神疾患別疾病

A 発達障害と診断された後にうつ病や神経症で精神病様態を併発したケースです。このケースについては、うつ病は、発達障害が起因して発症したものとの考え方が一般的であることから、同一疾病として取り扱われます。

B 発達障害と診断された後にうつ病や神経症で精神病様態を併発したケースです。このケースについては、精神病様態は、発達障害が起因して発症したものとの考え方が一般的であることから、同一疾病として取り扱われます

C うつ病、または統合失調症と診断されていて、後から発達障害が判明したケースです。このケースについては、ほとんどが診断名の変更であり、あらたな疾病がはっせいしたものではないため、同一疾患となります。

D 知的障害と発達障害は20歳前に発症するものとされているので、知的障害と判断されたものの障害年金の受給に至らない程度であった場合において、後から発達障害が診断され障害等級に該当する場合は原則同一疾病となります。

E 知的障害と診断されていて、後からうつ病が発症した場合は、知的障害が起因して発症したという考え方が一般的であるため、同一疾病となります。

F 知的障害と診断されていて、後から神経症で精神病様態を併発した場合は、別疾病となります。

G 発達障害や知的障害と判断されていて、後から統合失調症が発症することは少ないため、原則別疾病となります。ただし、発達障害や知的障害であっても稀に統合失調症の様態を呈すものもあるため、医師が統合失調症の診断名を付するような場合は同一疾病となります。

1-2 心房細動と脳梗塞

請求傷病が「脳梗塞」である場合、「心房細動」と「脳梗塞」など、脳血管疾患の背景に心疾患が疑われる場合があります。例えば診断書等の傷病名や原因欄に「心原性脳梗塞」と記載のある場合や、既往症欄に「心房細動・心筋梗塞」等の記載がある場合は注意が必要です。心疾患と相当因果関係を確認する必要があり、相当因果関係があるとされた場合は、心疾患での初診が脳梗塞の初診日となるためです。

実務的には、心房細動は相当因果関係有り、心筋梗塞は相当因果関係無しとなるケースが多いように感じます。審査の結果相当因果関係が無しとされる場合であっても、それを確認するために書類整備は求められます。

因果関係の確認のために、心疾患の病歴状況等申立書及び心臓用アンケート、場合により受診状況等証明書等が必要となります。少なくとも心疾患の病歴状況等申立書と心臓用アンケートは整備しておくようにします。


1-3 悪性新生物・癌(がん)

原発性か転移性かの確認が必要となります。

◇原発性

 他の部位の癌との相当因果関係は認めらない。

◇転移性

 他の部位の癌との相当因果関係が認められる可能性が高い。

また、手術後に再発した癌については、手術後から再発時までの経過を確認する必要があるため、手術前の初診日と再発後の初診日のそれぞれを確認できる受診状況等証明書を添付の上、手術後から再発時までの治療経過について医師に記載してもらうことが必要です。

もともと遺族の死因因果関係確認のページ。よく精査すること


1-4 脳梗塞(複数回発症)

 1回の脳梗塞は、発症すると突然意識障害がでて重症化する等、障害年金の初診日としてはわかりやすいケースが多いのですが、問題は複数回発症する場合です。

基本的な考え方は次のとおりです。

・複数回の脳血管疾患がある場合は、初診日はそれぞれ別々とされます。

・多発性脳梗塞やラクナ梗塞の場合は、一連の疾患とされる場合があります。

 受診状況等証明書や診断書に既往症等で記載される場合は注意が必要です。

◆ ラクナ梗塞

 脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしますが、ラクナ梗塞はこの細い血管が詰まることによって起きる脳梗塞です。一般には、自覚症状が多少あっても見逃すことが多く、無症候性脳梗塞や隠れ脳梗塞とも呼ばれています。


2 新法と旧法とは

受給権発生年月日が、昭和61年4月1日前かそれ以後かにより区分されます。すなわち、障害認定日が昭和61年4月1日前で、障害認定日に受給権が発生するもの(認定日請求を行うもの)は、旧法が適用され、旧法障害年金の受給権が発生します。障害等級に該当していたことが確認できる診断書の提出が必要となります。

同じ初診日、障害認定日であっても、事後重症請求により受給権発生が現在の請求日となる場合は、新法が適用されます。

法律だけでなく険料納付要件や認定基準も旧基準で認定されます。(例:人工透析療法は新法なら2級、旧法なら3級となります。)

旧法適用のケース

障害認定日請求

図006

   

新法適用のケース

事後重症請求

図007



3 複数障害がある場合(併合) 

 2つ以上の傷病をもっている場合、それぞれの傷病ごとに請求を行い、原則としてそれぞれの傷病ごとに障害の程度が認定されることになります。請求をするときには、それぞれの傷病ごとに診断書・病歴申立書等を添付します。 

 例えば、脳血管障害(脳出血、脳梗塞等)で障害が現れているのが、肢体の不自由(手足の障害)と器質性精神障害、言語障害の場合、「肢体の障害用」と「精神の障害用」と「言語機能の障害用」の診断書を組み合わせて提出する方法が考えられます。この段落H24厚手引P14

 それぞれの傷病の初診日の加入制度、相当因果関係、その程度、症状のある部位等により請求方法、認定方法が異なっており、併合(加重)認定、差引認定、総合認定など、複数障害がある場合の請求は非常に複雑であり、同一の診断書や同一の部位であればそれぞれの傷病が混在していて認定できないケースも生じます。

2つ以上の傷病による障害年金の併合は、「併合」、「初めて2級」、「併合改定」の3つに区分されます。認定基準「併合(加重)認定表」により、併合認定が行われます。


1.併合認定

1 併合

それぞれ2級以上の障害年金を併合する場合となります。

障害給付(※1)の受給権者に、さらに障害給付(障害基礎年金及び障害等級が1級または2級の障害厚生年金をいいます。)を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害給付(※2)が支給されます。

前発障害と後発障害の区分は、受給権発生年月日で判断されます。

※1 障害基礎年金及び「障害等級」1級または2級の障害厚生年金をいいます。なお、現在障害基礎年金が支給停止中のもの及び障害厚生年金が3級または支給停止中であるが、以前に1級または2級であったものを含みます。)

※2 併合後1級または2級になるものに限ります。


2 初めて2級

2つ以上の傷病による障害を併給して、初めて2級以上の障害となる場合です。

2以上の障害を併せて、初めて障害等級2級以上に該当するに至ったときは、当該障害を併合した障害の程度による障害給付が支給されます。

・前発障害と後発障害の区分は、受給権発生年月日で判断されます。

・前発障害と基準障害の区分は初診日で判断されます。

・納付要件等は基準傷病で確認されることになるため、前発障害の初診日において納付要件を満たしていない場合においても、基準傷病において納付要件を満たしていれば、請求が可能です。

・支給対象となる制度は、基準傷病の初診日で決まります。

・前発の障害については、その障害の程度が3級以下のもの(以前に1級または2級の障害基礎年金であったものを除く)に限ります。

・基準障害以外の「その他障害」だけを併せて2級以上でないことが必要です。

 ・請求は65歳以後であっても可能です。ただし、65歳に達する日の前日までの間に障害等級に該当しる必要があり、65歳到達よりも前の現症日の診断書が必要になります。  

・請求のあった日の翌月分から支給されます。

3 併合改定

2級以上の障害年金に、2級以上に該当しない程度の障害が発生し、上位等級に該当する場合です。

障害給付(※4)の受給権者に、さらに障害等級1級・2級に該当しない程度の障害が生じた場合には、前後の障害を併合した障害の程度による障害給付が支給されます。この場合、後発障害は受給要件を満たしていることが必要となります。

※4 障害基礎年金及び障害等級1級または2級の障害厚生年金をいいます。なお、現在障害基礎年金が支給停止中のもの及び障害厚生年金が3級または支給停止中となっているが、以前に1級または2級であったものを含みます。

2.総合認定

 内科的疾病が併存しているときは「総合認定」として、併合の取扱は行われず、総合的に認定されます。

例を記載する


3.差引認定

 障害の対象となる障害が2つ以上ある場合は、通常それらの障害を併合して認定が行われますが、次の条件に合致する場合は、差引認定が行われます。

1. 障害認定の対象とならない障害(前発障害)と同一部位に新たな障害(後発障害)が加わった場合は、現在の障害の程度から前発障害の障害の程度を差し引いて認定されます。

2.同一部位とは、障害のある箇所が同一であるもの(上肢又は下肢については、それぞれ1 側の上肢又は下肢)のほか、その箇所が同一でなくても眼又は耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位となります。

3.「はじめて2 級による年金」に該当する場合には、適用されません。

認定例

 厚生年金保険に加入する前に、右手のおや指の指節間関節及び小指の近位指節間関節(PIP)より切断していた者が、厚生年金保険に加入後、事故により右手のひとさし指、なか指及びくすり指を近位指節間関節(PIP)より切断した場合


1により差引認定すると差引残存率は、67%-18%=49%となり、差引結果認定表により認定すれば、障害手当金該当となります。しかしながら後発障害のみの活動能力減退率は56%であり、差引残存率より大であるため後発障害の活動能力減退率により厚年令別表第1の3級と認定されます。

別表3 現在の活動能力減退率及び前発障害の活動能力減退率

併合判定参考表(別表1)現在の活動能力 減退率(%)前発障害の活動能力 減退率(%)
1号区分1~913495
区分10~13119
2号10584
3号9274
4号7963
5号7344
6号6740
7号5634
8号4518
9号3514
10号2711
11号208
12号146
13号94

別表4 差引結果認定表

差引残存率障害の程度
112%以上国年令別表     1級  9号・11号
111%~76%国年令別表     2級 15号・17号
75%~51%(治ったもの)厚年令別表第1  3級 12号
75%~24%(治らないもの)厚年令別表第1  3級 14号
50%~24%(治ったもの)厚年令別表第2      21号




差引認定は以下の通りです。

(1) 障害認定の対象とならない障害(前発障害)と同一の部位に新たな障害(後発障害)が加わった場合は、現在の障害の程度から前発障害の障害の程度を差し引いて認定します。

(2) 同一の部位とは、障害のある個所が同一であるのはもちろんのこと、その箇所が同一でなくても、眼または耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一とします。

(3)初めて2級による障害年金に該当する場合は、差引認定はしません。つまり最初の障害も後の障害も障害等級に該当しなかったがこの二つの障害を併せると障害基礎年金2級に該当する場合は差引認定はしません。

よって問題となるのは、差引認定の対象となるような障害が怪我前と怪我後にあったかどうかです。

高次脳機能障害の場合は、上記のような差引認定の対象とはならないと思います。

なぜならば高次脳機能障害の障害は記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害等がほとんどで、診断書も精神障害用のものを用いるからです。

わかりにくい説明で申し訳ありません。


複数の障害があるとき

複数の障害があるときは、障害の発生の時期と程度により認定方法が異なります。

 初診時期が同じときは「併合認定」となり、内科的疾病が併存しているときは「総合認定」となります。

 初診日が異なる傷病の場合は、前・後発障害ともに2級以上の障害の状態である時は「併合認定」されます。前発障害が2級以上で後発障害が2級に満たないときは「併合改定」となります。前・後発障害ともに2級に満たない場合は、「はじめて2級」といい、後発障害が納付要件を満たしていて、前・後発障害を併せれば「障害等級」に該当する場合をいいます。これにより、「障害等級」が上位等級に上がり年金額が改定または支給されることになります。




3.具体例

1.併合

① 2級の障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、年金請求した。後発障害の認定結果は2級該当。

図510

※日本年金機構本部で併合後の1級の年金の決定及び前発障害年金の失権処理が行われます。

② 2級の障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、年金請求年金請求をした。後発障害の認定結果は2級該当。

※後発の障害基礎年金の決定は行われず、当該年金請求書、診断書及び認定表(写)を額改定請求書に添付し、日本年金機構本部へ送付されます。日本年金機構本部での併合認定後、前発障害年金の額改定処理が行われます。

③ 2級の障害基礎年金の受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、年金請求をした。後発障害の認定結果は2級該当。

※日本年金機構本部で併合後の1級の年金の決定が行われるとともに、前発障害年金の失権処理をし、年金事務所に通知されます。

④ 2級の障害基礎年金の受給権者に、国民年金の加入中に新たな傷病が発生し、年金請求をした。後発障害の認定結果は2級該当。

※日本年金機構事務センターで併合後の1級の年金の決定及び前発障害年金の失権処理が行われます。



⑤1級または2級の障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者の障害が軽快し、3級に改定された後、その受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、年金請求をした。後発障害の認定結果は2級該当。

※日本年金機構本部で併合後の1級の年金の決定及び前発障害年金の失権処理が行われます。

なお、併合して1級にならない場合は、併合後の障害年金(2級)の決定及び前発障害年金の失権処理が行われます。



⑥1級または2級の障害基礎年金及び障害基礎年金の受給権者の障害が軽快し、3級に改定された後、その受給権者に、国民年金の加入中に新たな傷病が発生し、年金請求をした。後発障害の認定結果2級該当。

※後発の障害基礎年金の決定は行われず、当該年金請求書、診断書及び認定表(写)を額改定請求書に添付し、日本年金機構本部へ送付されます。日本年金機構本部での併合確認後、前発障害年金の額改定処理が行われます。

 なお、併合しても1級にならない場合も、前発障害年金の2級への額改定処理が行われます。



2.初めて2級

①3級の障害厚生年金の受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、「初めて2級」としての年金請求をした。基準障害の認定結果は3級該当。

日本年金機構本部で併合後の2級の年金の決定及び前発障害年金との選択処理が行われます。

 なお、この3級と3級との併合で2級になる事例としては、どちらかの3級の障害が併合判定参考表の5号または6号に該当しているものに限られています。

 また、併合しても2級にならない場合は、前発障害年金と基準障害年金との選択となります。

②3級の障害厚生年金の受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、「初めて2級」としての年金請求をした。基準障害の認定結果は2級該当。

日本年金機構本部で併合後の1級の年金の決定及び前発障害年金との選択処理が行われます。

 なお、併合しても1級にならない場合は、基準(後発)障害年金の決定処理を行い、前発障害年金と基準(後発)障害年金との選択となります。


③3級の障害厚生年金の受給権者に、国民年金の加入中に新たな傷病が発生し、「初めて2級」としての年金請求をした。後発障害の認定結果は2級該当。

事務センターで併合後の1級の年金の決定が行われ、決定後に選択申出書が日本年金機構本部へ送付されます。

なお、併合しても1級にならない場合は、基準(後発)障害年金の決定処理を行い、前発障害年金と基準(後発)障害年金との選択となります。



3.併合改定

① 2級の障害基礎年金の受給権者に、国民年金の加入中に新たな傷病が発生し、改定(年金)請求をした。後発障害の認定結果は3級相当。

 事務センターで前発障害年金の1級への額改定処理が行われます。

② 2級の障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者に、厚生年金の加入中に新たな傷病が発生し、改定(年金)請求をした。後発障害の認定結果は3級該当

日本年金機構本部で前発障害年金の1級へ額改定処理が行われます。

 なお、併合しても1級にならない場合は、後発障害年金(3級)の決定処理が行われ、前発障害年金と後発障害年金との選択となります。



③ 2級の障害基礎年金の受給権者に、厚生年金保険の加入中に新たな傷病が発生し、改定(年金)請求をした。後発障害の認定結果は3級該当

日本年金機構本部で後発障害年金(3級)の決定が行われるとともに、関係資料を事務センターへ送付し連絡します。事務センターでは併合認定後、前発障害年金の1級への額改定処理が行われます。

 なお、1級にならない場合も、前発障害年金(2級)と後発障害年金(3級)との選択となります。


3級と2級の併合で1級になるケースとは

3級と2級の併合で1級になるケースは、3級が5号に該当しているものに限られます。

5号に該当とは、次の障害の状態となります。

(併合判定参考表)

区分障害の状態
351両眼の視力がそれぞれ0.06 以下のもの
352一眼の視力が0.02 以下に減じ、かつ、他眼の視力が0.1 以下に減じたもの
353両耳の平均純音聴力レベル値が80 デシベル以上のもの
354両耳の平均純音聴力レベル値が50 デシベル以上80 デシベル未満で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの

 つまり、眼・耳が関連する傷病のみが対象となります。


3級と3級の併合で2級になるケースとは

3級と3級の併合で2級になるケースは、どちらかの3級の障害が併合判定参考表の5号または6号に該当しているものに限られます。5号は上記のとおりで、6号は次の障害の状態となります。

(併合判定参考表)

区分障害の状態
361両眼の視力が0.1 以下に減じたもの
362そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
363脊柱の機能に著しい障害を残すもの
364一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
365一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
366両上肢のおや指を基部から欠き、有効長が0 のもの
367一上肢の5指又はおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くのもの
368一上肢のすべての指の用を廃したもの
369一上肢のおや指及びひとさし指を基部から欠き、有効長が0 のもの





4 児童扶養手当と障害年金の子加算

 平成23年4月1日、障害年金加算改善法が施行され、これにより障害年金の子加算については次のとおり取り扱いが変更されました。

変更前

  障害年金の受給権発生時において、受給権者によって生計を維持していた配偶者や子を有する場合のみ加給年金額や加算額が加算されていました。受給権発生後の婚姻、子の出生は加算の対象とはなりませんでした。

変更後

障害年金の受給権が発生した後に、婚姻や出生などの事由により、新たに生計を維持することとなった配偶者や子に対しても、加算開始の事由が発生した時点から将来に向かって加算が行われることになりました。

対象となる年金は、障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金、及び国民年金や厚生年金の旧障害年金です。

平成23年4月1日の時点で、障害の年金の受給権があるにもかかわらず、受給権発生後の婚姻、出産等のため加給年金額や加算額が加算されていない人も、加算の対象となります。


また、障害年金加算改善法施行に伴い、児童扶養手当法も改善され、障害年金の子の加算から児童扶養手当への移行及び児童扶養手当から障害年金の子の加算への移行ができるようになり、障害年金の加算額の対象者と児童扶養手当の選択が可能となりました。

 

 

5 平成6年改正法(旧制度で障害年金が受けられなかった人のための特例措置)

昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの間に、初診日において国民年金または被用者年金各法の被保険者であった人で、障害等級2級以上に該当しながら旧制度の要件を満たしていなかった場合は、障害年金を受給することができませんでした。加入直後に初診日があるような場合が該当します。制度の谷間に落ちた、「谷間の障害年金」と呼ばれるものです。

図020


◆ 旧制度の主な要件

 ①国民年金の場合

  初診日の前日において公的年金の加入期間が1年以上あること等

 ②厚生年金の場合

  被保険者期間中に発病し、その初診日前に他の公的年金の加入期間も含め、6ヶ月の被保険者期間を有していること

 

 これに対し、平成6年に受給要件の改正が行われました。これにより、障害年金の受給権を有していなかった人が、新たな(現在の)保険料納付要件を満たし、平成6年11月9日の時点で1級または2級の障害等級に該当するか、障害等級に該当していなくてもその後65歳になるまでに1級または2級の障害等級に該当したときは、65歳に達する日の前日までの間に請求することによって障害基礎年金を受けられるようになりました。

 

◆ 注意事項

・保険料納付要件は、直近1年要件を除きます。

・20歳前傷病による障害基礎年金と同様の所得制限が設けられています。



6 老齢基礎年金の繰上げをしている場合

60歳前に初診日がある場合は、老齢基礎年金の全部繰り上げ又は一部繰り上げ請求後であっても障害認定日による請求は可能です。しかし、60歳以降に初診日がある場合は要注意です。繰り上げ請求の時期によっては、障害認定日による請求ができません。

なお、老齢年金とは選択となります。

図015-1


図015-2




第4章-2.年金決定後の制度・しくみ                     

年金が決定されると文書にて請求者に通知されます。

支給決定された場合 

年金の権利を証明する「年金証書」が送られます。

年金証書の「厚生年金保険決定通知書」欄に障害厚生年金の決定内容が記載され、「国民年金決定通知書欄」に障害基礎年金の決定内容が記載されます。その他、「障害等級」や「次回診断書提出年月」などが記載されます。年金受給の権利の証明であり、決定内容等の通知となる重要なものであり、何度も交付されるものではなく、初回請求時のみ交付されるものですので、大切に保管をしておくことが必要です。

 



遡及請求した場合で、請求日において増額改定される場合などは、年金証書には受給権発生時の障害等級や年金額が記載され、改定内容については後日「年金決定通知書・支給額変更通知書」で通知されることになります。

 制度や内容によって異なりますが、決定までには2ヶ月~6ヶ月ほどかかります。

不支給決定となった場合 

 年金を受けられない場合には、不支給(却下)決定通知書が送付されます。不支給(却下)の内容と理由が記載されます。

1 提出が必要となる書類

◆ 状態状態確認届

  診断書のことです。永久認定以外の、有期認定の場合は、定められた時期に送付される状態状態確認届(診断書)を提出する必要があります。提出がないと、年金はいったん差止となってしまいますので、必ず提出する必要があります。

◆ 生計維持確認届

  障害年金に障害基礎年金の子の加算額、障害厚生年金の配偶者加給年金額が加算されている人は、生計維持の確認のため、毎年送付される生計維持確認届に生計を維持している対象者の氏名を記載して提出します。引き続き生計を維持していることの申し立てとなります。

提出する時期

誕生日の月に提出します。
以前は、20歳前障害(証書コード:2650・6350等)は毎年7月に、それ以外の障害年金受給者は毎年誕生月に提出していました。

2 有期認定の場合の診断書の提出

 障害年金の決定には、「永久認定」と「有期認定」の2種類があります。永久認定の場合は診断書を提出する必要はありませんが、有期認定の場合は最短1年~最長5年間の有期認定となるため、認められた期間が終了した時には、再度診断書を提出する必要があります。提出時期である1年~5年後の誕生月(20歳前障害基礎年金は7月)に診断書が送付されるので、医師に記載してもらい、提出します。その結果は次の3つのパターンに分かれます。

1.同じ等級での継続支給

 引き続き障害年金が支給されます。「次回の診断書の提出について(お知らせ)」により通知されます。

2.等級の変更

 上位等級、下位等級への等級変更となり、変更後の等級で受給することになります。「支給額変更通知書」により通知されます。

3.支給の停止

 障害等級に該当しないという判断がされた場合で、年金は支給停止となります。「支給額変更通知書」により通知されます。

診断書提出の注意点

・指定日前1ヶ月以内の現症日で作成します。

・指定の病院は特にありません。

・受給中の障害年金の対象傷病について記載されていることが必要です。

・障害状態確認届を提出していないために長期間差し止めとなっている場合は、原則として時効となっていない年以降の毎年分(誕生月の現症日)の診断書を提出します。

 ※受診していない等で提出できない場合は、なぜ提出できないのか、その理由を申立書として添付します。

・自身で診断書を記載してしまうケースが多くあるため、注意が必要です。


5-1 年金額の改定

障害の状態が軽くなったり重くなったりしたときには「障害等級」の変更が行われ、年金額の改定が行われます。

 改定の方法は2通りあり、現況届と同時に提出される「診断書」によるものと、受給権者本人からの改定請求によるものがあります。

 もともと、障害の状態を「障害等級」にあわせて決定する際に、欠損障害などの症状が固定的なものは永久認定となり、内部障害や精神障害など障害の程度が変わる可能性のあるものは有期認定とされます。有期認定とされた場合は、1年~5年の範囲で「診断書」の提出が必要になり、必要年には障害状態確認届(診断書)が送られます。

 現況届に添付された「診断書」の認定結果により増額改定されるときは、提出期限月の翌月から改定されます。減額改定されるときは、提出期限月から3ヶ月経過した月の翌月分から改定されます。

 改定請求については、障害年金の受給権を取得した日または日本年金機構で障害の状態を認定した日から1年経過した日の翌日以降でなければ請求できません。

 たとえば、有期認定で1級から2級に下がったときや改定請求で同等級との決定を受けたときは、1年経過しなければ改定請求できません。ただし、現況届により支給継続となった場合は、いつでも改定請求することができます。

 また、非該当(支給停止)となったときは、いつでも「支給停止事由消滅届」を提出することができます。額改定請求とは異なり、1年間を待つ必要はありません。

 受給権者本人からの請求で改定が行われる場合は、請求日で改定し翌月から改定後の額で支払われます。


5-2 額改定(請求) 【平成26年度法改正】

 障害の程度が変わった場合の年金額の改定には、次の2つがあります。

1.厚生労働大臣の審査による改定

 定期的に提出する診断書により、上位等級、または下位等級に改定されます。診断書の提出月は、20歳前障害の場合は指定された年の7月、それ以外の障害年金は指定された年の誕生月となります。

増額改定になる場合

  指定日の属する月の翌月分から増額となります。

A. 4/10が誕生日の障害年金(Bに該当する場合を除く)

図029-1

 



減額改定・支給停止になる場合

  指定日の翌月から起算して3ヶ月を経過した日の属する月分から改定・変更されます。

A. 4/10が誕生日の障害年金(Bに該当する場合を除く)

 

2.受給権者の請求による改定

 改定請求を行うことにより、上位等級に改定されるものです。額改定請求書に診断書(請求日前1ヶ月以内の現症日のもの)を添付して改定請求します。

ただし、この場合の改定請求は、受給権を取得した日または厚生労働大臣の審査(現況届による確認を除く)を受けた日から1年後でなければ行うことはできません。ただし、一部の障害については、1年を経過しなくても請求できるようになる予定です。(平成26年度法改正)

 また、請求日において65歳以上の障害厚生年金の受給権者であって、同一の支給事由に基づく障害基礎年金の受給権を有していない場合は、年金改定請求はできません。65歳に達する日以後に請求する場合、65歳に達する日前日までに、障害基礎年金の受給権を有している必要があります。ただし、旧厚生年金保険法による障害年金の受給権者は除きます。

 永久認定されている場合は定期的に診断書を提出するわけではないので、自ら改定請求を行わない限り上位等級には認定なされないため、状態に応じて改定請求(診断書の提出)が必要となります。

 また、障害基礎年金の受給権者に、納付要件を満たす新たな障害(ただし、障害等級に該当しない障害の程度、以下「その他障害という」)が発生し、その他障害の障害認定日以後で65歳に達する日の前日までの間に、障害基礎年金の支給事由となった障害とその他障害とを併合した障害の程度が、当該障害基礎年金の支給事由となった障害の程度より増進したときは、その期間内に障害基礎年金の額の改定を請求することができます。

 具体的には、2級の障害基礎年金受給権者に新たに2級に満たない程度の軽度の傷害が発生した場合で、前後の障害を併合すれば1級に相当する場合です。

 この場合、改定後の額による障害基礎年金の支給は、額の改定が行われた日の翌月から行われます。(国年法34) ※実務上扱ったことがないが。。。

図表7-6 その他障害による額の改定の例

先発  +  後発     =  増進

2級     その他障害     1級


 また、障害厚生年金3級の受給者が額改定請求を行い、2級以上に該当した場合は、障害厚生年金が改定されるとともに、自動的に障害基礎年金も決定され、受給することができます。障害共済年金も同様です。


 


図026-1








 






障害状態確認届により支給継続となった場合は、いつでも年金額の改定請求を行うことができます。
引き続き年金を支給するための確認行為をしただけであり、診査し処分した取り扱いにはなりません。審査請求もできません。








 

なお、新規で障害年金請求を行った結果、障害等級に非該当として不支給となった場合は、再度いつでも新規での障害年金請求を行うことができます。



額改定請求に関する法改正(平成26年4月)

障害年金の受給権者が行う、障害の程度が増進した場合の年金額の額改定請求については、短期間のうちに障害の程度が変更したとして何度も請求を行うことのないよう、受給権を取得した日又は障害の程度の診査を受けた日から1年間の待機期間が設けられています。

平成24年8月に成立した「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成24年法律第62号)により、「障害の程度が増進したことが明らかである場合」として厚生労働省令で定める場合には、額改定請求の待機期間を要しないこととされました。

 すべての傷病が対象となるわけではなく、次の傷病が対象となり、一部の項目については、()内に記載された限定がされています。精神の障害は含まれませんでした。

額改定請求の待機期間を要しないこととする対象

1両眼の視力の和が0.04 以下となった場合
2両眼の視力の和が0.05 以上0.08 以下となった場合
3両眼の視野がそれぞれ5 度以内となった場合
4両眼の視野がそれぞれ中心10 度以内におさまるもので、かつ、10 度以内の8 方向の残存視野の角度の合計が56 度以下となった場合
5両耳の聴力レベルが100 デシベル以上になった場合
6両耳の聴力レベルが90 デシベル以上になった場合
7喉頭全摘出手術を施した場合
8両上肢のすべての指を欠いた場合
9両下肢を足関節以上で欠いた場合
10両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠いた場合
11一上肢のすべての指を欠いた場合
12両下肢のすべての指を欠いた場合
13一下肢を足関節以上で欠いた場合
14四肢又は指の麻痺(完全麻痺に限る)(脳血管障害又は脊髄の器質障害については6か月以上継続した場合に限る)
※完全麻痺以外の麻痺は、障害の程度の増進が明らかでなく、明確な要件とは言えないため。また、脳血管障害又は脊髄の器質障害については、障害の固定が認められるまでに6か月程度必要であるため。
15心臓移植又は人工心臓(補助人工心臓を含む)の使用
16CRT(心臓再同期医療機器)又はCRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着した場合
17人工透析療法の施行(3か月以上継続した場合に限る)※一時的な人工透析療法の施行を除外するため。
18人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合(人工肛門については6か月以上継続した場合に限る)
※一時的に利用する人工肛門を除外するため。
19人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合(6か月以上継続した場合に限る)
※一時的に利用する人工肛門及び一時的に行う尿路変更を除外するため。
20人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする状態)にある場合(6か月以上継続した場合に限る)
※一時的に利用する人工肛門及び一時的な完全排尿障害状態を除外するため。
21脳死状態又は遷延性植物状態になった場合(遷延性植物状態については3か月以上継続した場合に限る)
※遷延性植物状態については、障害の固定が認められるまでに3か月程度必要であるため。
22人工呼吸器の装着(1か月以上常時継続した場合に限る)
※一時的な人工呼吸器の装着を除外するため。

規定が困難とされたもの

1白血病等個別の病名によるもの
2一般状態区分オに該当すると判断される場合(ウ及びエも同様)
3胃ろうの造設をした場合
4手術後に状態が悪化した場合
5悪性新生物による終末期の状態にある場合
6悪性新生物について積極的治療は行わず緩和ケアを行っている場合





5-3 支給停止事由消滅届

 

 年金をいったん受給したとしても、障害の程度が軽快した場合は支給停止となります。

支給停止となっても、その後再度障害の程度が重くなった場合は、支給停止事由消滅届に診断書を添付して提出します。障害等級に該当していると認められた場合は障害年金の支給が再開されます。

ただし、年金を受ける権利がなくなるまでの間(65歳到達または支給停止となってから3年経過のいずれか遅い日)に、障害等級に該当している必要があり、失権した場合は支給停止事由消滅届を出すことはできません。

診断書の現症日について、提出の1ヶ月以内のもの等の規定はないため、障害が悪化した状態(現症日)の診断書を提出し、実際に支給されるのは現症日の翌月からとなります。



5-4 障害者特例請求書

65歳前の報酬比例部分のみを受給している受給者が、厚生年金被保険者でなく、かつ1級~3級の障害の状態に該当することにより、特例支給(定額部分、該当すれば加給年金)を請求するときの届です。厚生年金の被保険者でないこと(退職していること)、一部繰上げ者でないことが条件となります。

図036

提出パターン

A.障害年金請求と同時に障害者特例を請求

 次に該当する場合は、障害年金請求と同時に障害者特例を請求します。 

・65歳前の報酬比例部分のみを受給している

・厚生年金被保険者ではない

障害者特例請求書を1枚記載して添付するだけであり、それほど手間はかからないため、明らかに65歳まで老齢年金を選択しない場合以外は請求するようにします。




B.単独で障害者特例を請求

・請求日前1ヶ月以内の現症日の診断書を添付します。

・ただし、障害年金受給中で、障害者特例請求日から次回診断書提出月までに1年以上の期間がある場合は診断書添付の省略ができます。

・請求する傷病が、症状固定を除き、初診日から1年6ヶ月経過していなければならないため、診断書の③欄⑧欄等で、初診日から1年6ヶ月経過していることが確認できることが必要です。確認できない場合は、初診日から1年6ヶ月経過していることを確認できる受診状況等証明書が必要となります。


5-5 子の障害について

子の加算については、18歳の年度末までの支給となっていますが、子が障害等級1級または2級の状態であるときは、20歳になるまで加算されます。

障害年金請求時に子の診断書も提出し、障害の状態が認められていれば届は不要ですが、未審査である場合は届が必要となります。

1.子が18歳到達月以後最初の3月31日以前に、障害等級2級以上の障害の状態にある(至った)場合

「障害基礎・老齢厚生年金・退職共済年金加算額加給年金額対象者の障害該当届」(様式214号)に、18歳到達日以後最初の3月31日以前の診断書を添付して提出します。18歳到達日以後最初の3月31日以前の診断書が添付できない場合は、次の2により届を行うことになります。

2.子が18歳到達月以後最初の3月31日より後に、障害等級2級以上の障害の状態に至った場合

「障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届」(様式229-1号)に、障害の状態に至った日の現症診断書を添付して提出します。現症日の翌月分から加算されることになります。


5-6 子の加算額がつかなくなる場合

子の加算については、次のいずれかに該当するようになった場合は、加算額の対象者ではなくなります。該当するに至った日の翌月から、該当しなくなった子の数に応じて年金額が減額改定されます。

届は不要なもの

  1. 18歳到達年度の末日(3月31日)に達したとき

(1・2級の障害等級に該当する障害の状態にある場合を除きます)

2. 20歳に達したとき

届が必要なもの

3. 死亡したとき

4. 受給権者によって生計が維持されなくなったとき

5. 婚姻をしたとき

6. 受給権者の配偶者以外の者の養子となったとき

7. 離縁によって受給権者の子でなくなったとき

8. 1・2級の障害等級に該当する障害の状態にある子が、障害の程度が軽くなって1・2級に該当しなくなったとき(その子が18歳到達年度の末日までであるときを除きます)

該当することになった場合は、「加算額・加給年金額対象者不該当届(様式第205号)」を提出します。

5-7 配偶者の加給年金額がつかなくなる場合・(停止になる場合)

2級以上の障害厚生年金・障害厚生年金に加算される、生計を維持している配偶者に対する加給年金については、次のいずれかに該当するようになった場合は、加給年金の対象者からはずれることになり、該当するに至った日の翌月から、年金額が減額改定されます。

1. 死亡したとき

2. 受給権者によって生計が維持されなくなったとき

3. 離婚したとき

4. 65歳に達したとき。(この場合、配偶者が65歳から受給する老齢基礎年金に振替加算が加算されます。なお、大正15年4月1日以前生まれの配偶者は年齢による制限がありません)

5. 配偶者が、老齢(退職)年金を受けられるとき。(厚生年金被保険者期間が240月以上等)

6. 障害給付を受けられるとき。


5-8 事後重症による年金請求が決定されたあとの障害認定日による請求

厚年手引10

 いったん事後重症請求による年金の決定が行われてしまった後でも、障害認定日による請求を行うが可能です。この場合、次の書類を提出します。

提出書類

・年金請求書(障害給付の請求事由欄を、「1」の障害認定日による請求とするもの)

・障害認定日の診断書(直近の診断書は提出不要です)

・加算対象者がいる場合は、生計維持を証明する資料

・取下げ書(障害認定日において受給権が発生する場合には、事後重症による請求を取り下げる旨を記載)

・年金証書(事後重症による請求分)

・前回請求時から今請求時までの病歴状況等申立書

・前回請求時に事後重症請求とした理由が矛盾している場合にはその理由を説明する文書

・時効に関する申立書(時効分が生じる場合) ※受付日は遡及しません。

 

7 障害年金はいつまで受給できるか(支給停止・失権)

障害年金は、障害等級に該当する間支給されますが、支給が停止される場合、受給する権利がなくなる場合があります。

支給停止と失権は、次のとおり意味が異なります。


【支給停止】障害年金を受ける権利はあるものの、支払いがされないもの

【失権】  障害年金を受ける権利そのものが、効力を失うこと



支給停止

1.障害年金が支給停止される場合

①労働基準法による障害補償を受けることができるときは、6年間支給停止になります。

(注) 労働者災害補償保険法による障害補償を受けられるときは、障害基礎年金・障害厚生年金では調整を行わず、労働者災害補償保険法の給付に調整がかかります。


②障害の程度が軽減し、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その間支給停止になります。

③障害の原因が第三者の行為によるときは、調整のため支給停止になります。

損害賠償の請求権が政府にあることから障害年金の請求をするときに「第三者行為事故状況届」と証明書等を提出します。

 調整を行うため、年金を支給停止する期間は事故日の翌月から最大2年となります。

 受給権者が受ける損害賠償金のうち調整対象となるのは、生活補償相当額になります。


失権

2.障害年金が受給できなくなる場合は(失権)

次のいずれかに該当した場合は、権利が消滅します。

①障害年金の受給権者が併給の調整により前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金の受給権を取得したときは、従前の障害基礎年金の受給権が消滅します。

②受給権者が死亡したとき。

③障害等級1~3級に該当していない人(支給停止中)が65歳に達したとき。ただし、障害等級1~3級に該当しなくなって3年を経過していないときを除きます。

④障害等級1~3級に該当していない人(支給停止中)が65歳になり、65歳到達時に3年が経過していない場合は、3年が経過したとき。年相マニュアルWEBmix



8 併給について

1.老齢や遺族給付との併給について

原則として、年金には1人1年金の原則があるため、2つ以上の受給権があっても本人の選択により1つの年金が支給され、他の年金は支給停止となりますが、特例的に2つ以上の年金が受けられることもあります。選択申出書により受け取る年金を選びます。

65歳の前と後では、受給方法が大きく変わります。

65歳前について

障害年金と、他の種類の老齢年金や遺族年金とは併給ができません。




65歳以後について

障害基礎年金と老齢厚生年金や、遺族厚生年金等と併給ができるようになります。





【事例 63歳で障害基礎年金・障害者特例を請求した場合】

図023

○63歳で障害基礎年金請求と障害者特例請求を行い、受給権が発生しました。

○退職していたため、障害者特例として老齢年金の報酬比例部分に定額部分が加算されました。

○65歳未満であるため、障害基礎年金と老齢年金(報酬比例+定額部分)の選択となります。

○老齢年金の方が、障害基礎年金額より多かったため、老齢年金を選択しました。

○65歳以後は、障害基礎年金+老齢厚生年金の併給が可能となったため、選択変更をしました。


また、障害厚生年金と厚生年金基金との関係には注意が必要です。

企業年金連合会から支給される中途脱退者の基金年金障害厚生年金と併給できる
企業年金連合会から支給される解散基金の基金年金障害厚生年金と併給されない
各厚生年金基金から支給される基金年金各基金によって異なります

 老齢年金が課税されるのに対し、障害年金は非課税である等のメリットがあるため、老齢年金の方が多くても、障害年金を選択した方が有利となる場合があるため、次の税金等も考慮して選択を行うようにします。


○所得税 ○国民健康保険料 ○介護保険料 ○住民税 ○各市町村等の独自サービス等

2.加給年金額(加算額)はどうなる

 障害基礎年金の規定により、加算が行われている子があるときは、その間老齢厚生年金の子の加給年金額の支給が停止されます。   

3.障害基礎年金と遺族厚生年金の併給の注意点

 障害基礎年金(旧国年障害年金)と遺族厚生年金を併給した場合は、その間、遺族厚生年金の経過的寡婦加算が支給停止されます。ただし、障害基礎年金(旧国年障害年金)が支給停止されているときはこの限りではありません。


4.手続き方法

2つ以上の年金がすべて厚生労働省支払いの年金の場合

 →「年金受給選択申出書(様式201号)」を年金事務所・市町村役場等に提出します

2つ以上の年金のうち、共済年金が含まれる場合

 →「年金受給選択申出書(様式202号)」を年金事務所・市町村役場・各共済組合等に提出します。「有利な方を選択」とする場合は、共済年金額のわかる書類の写を添付します。

9 支給の調整(労災・傷病手当金)


労働者災害補償保険との調整

 障害年金と、同一原因の労災保険の給付は、障害年金が全額優先支給され、労災保険の給付が次のように減額されます。

減額率

図512


健康保険の傷病手当金との調整

障害厚生年金が受けられるときは、次のように調整されます。

1.傷病手当金 > 障害厚生年金 → その差額の傷病手当金が支給されます

2.傷病手当金 < 障害厚生年金 → 傷病手当金は支給されません

 また、障害厚生年金とともに障害基礎年金を受給する場合には、両方の年金を合算した額で調整が行われます。

障害基礎年金だけの受給である場合

調整対象となりません。


障害手当金が支給される場合

傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで、傷病手当金は支給されません。

1.傷病手当金が障害年金等よりも多い場合

図016

2.傷病手当金が障害年金等よりも少ない場合

図017

 


第5章 決定に納得がいかないときの対応方法

1 どのような対応方法があるか

 「障害年金を請求したが、支給されなかった。」「障害年金を受けていたが、障害等級が下がって、年金額が下がってしまった。」このような決定がされた場合で、納得ができない場合もあろうかと思います。決定部署に文句を言っても決定は変わりませんが、別の目で再度決定の見直しをしてもらうことが可能です。その機会は全部で5回あります。

決定に不服がある場合の流れ

1.審査請求

2.再審査請求

3.訴訟(地裁・高裁・最高裁)

 1の審査請求で決定が覆ることは少ないのですが、2の審査請求の方が決定の覆る確率が上がります。審査請求は厚生労働省職員が行うため、いわば内部の人間の再確認となるわけですが、審査会は外部の方が入って審査をするため、厚生労働省・日本年金機構の内部ルールにとらわれることなく判断されることが大きな要因です。審査会は審査会の考え方があり、厚生労働省側と考え方が異なる点も多く、「付言」等の形により指摘を行う裁決も見受けられます。


【例1】

「初診日が不明で却下」→「初診日は本人の申し立てのみであり、申し立ての初診は採用しない」

 本人が申し立てた初診日を示す医師の証明等がなかったため、却下処分となりました。審査会は、本人が申し立てた初診日を示す証明等がないのだから初診日としては採用しないとし、医師の証明があった別の受診日を初診日として取り扱うのが相当とし、障害年金が支給されました。


【例2】

「初診日に関して、第三者証明は不採用等で却下」→「第三者証明は有力な証明書類である(容認)」

  厚生労働省は初診日に関する第三者証明を20歳前障害に限って採用しています。このケースは20歳以後の初診のケースですが、審査会は第三者証明を有力な証明書類として採用し、障害年金が支給されました。



2 具体的な対応方法

2-1 審査請求

年金の決定に不服があるときは、決定があったことを知った日の翌日から起算して90日以内に文書または口頭で、地方厚生局内に設置された社会保険審査官に審査請求することができます。

ただし、次の内容については社会保険審査官が行う審査の対象とはなりません。

・保険者の対応(説明誤り、説明不足を含む)に対する不服

・保険者の不作為によるもの

・物価スライド特例水準に対する不服

・障害給付に係る次回の診断書の提出について(お知らせ)における診断書の提出年月に関すること

・障害給付に係る診断書の記載内容に対する不服

・障害給付に係る現況届による等級変更がないことに対する不服

 (等級変更のないことの確認であり、処分ではないためです。額改定請求は可能であり、その処分に対しては審査請求ができます。

 審査請求を行うと、原則として次のいずれかの決定がされます。

決定内容意味
容認請求者の主張を認める場合
棄却請求者の主張を認めない場合
却下審査請求が無効である場合 (例:請求する資格がない、請求できる期間を過ぎている場合等)

 決定が明らかに誤っている場合等は、行政側から処分変更がされることもあります。


2-2 再審査請求

社会保険審査会は、健康保険、船員保険、厚生年金保険及び国民年金の給付等処分に関して、第2審として行政不服審査を行う国の機関です。審理は、公正、公平を期するため公開が原則とされていて、公開審理が行われ請求人も意見を述べることができます。ただし公開審理は東京の厚生労働省でしか行われないため、遠方の場合出席して意見を述べることが難しい場合もありますが、欠席しても直ちに不利になるというわけではありません。

審理の結果は、審査請求と同様に、容認、棄却、却下のいずれかの決定が行われます。


2-3 訴訟

審査請求の決定に対してさらに不服があるときは、訴訟を行うことになります。

なお、決定の取消の訴え(行政事件訴訟等)を起こす場合は、原則として、再審査請求の裁決を経た後でないと提起できません。

ただし、

1.再審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき

2.決定の執行等による著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき

3.その他正当な理由があるとき

は、再審査請求の裁決を経なくても訴えを提起することができます。

この訴えは、裁決の送達を受けた日の翌日から起算して6ヶ月以内に、日本年金機構を被告として提起できます。ただし、原則として、裁決の日から1年を経過すると訴えを提起できません。


第6章 その他

1 平成6年改正法附則第4条による請求

平成6年11月9日施行(共済は平成6年11月9日)の法律改正により創設された、障害基礎年金・障害厚生年金・障害共済年金の支給要件の特例となります。

それまでは、3級不該当となり3年経過すると受給権が消滅(失権)していました。これが、65歳到達日又は3級不該当より3年を経過した日のいずれか遅い日に受給権が消滅することに改善されました。

 この改正に伴い、施行日前に受給権が消滅(失権)している障害年金の受給権者であった方が、65歳到達日の前日までに同一傷病(失権した障害年金の基になった傷病)の障害の程度が悪くなり、障害等級の1級又は2級に該当する場合は、請求することによって障害基礎年金が支給されます。

 この場合、請求書の受付日が受給権発生日となり、支給開始は請求日の翌月からとなります。

図013



-補足説明-

平成6年改正法附則第4条と第6条には、障害認定日による請求はありません。
また、附則第4条第1項又は第2項に該当する場合は53年金として決定し、附則第4条第5項又は第6項に該当する場合は63年金として決定します。


2 平成6年改正法附則第6条による請求

昭和36年4月1日~昭和61年3月31日の間に初診日がある障害については、支給要件が現在とは異なっていたため、年金制度に障害年金が支給されないといったケースがありました。例えば次の図のように、「6月以上加入」要件を満たしていなかったような場合です。

【例】

図018

これが平成6年法改正により、当時の支給要件に該当しないため障害年金を受けたことがなく、初診日に公的年金制度に加入していた方が、平成6年11月9日以後65歳になるまでにその傷病で障害等級の1級又は2級に該当する状態になり、3分の2の保険料納付要件を満たしている場合は、請求により障害基礎年金が支給されることになりました。

注意

・直近1年要件は使えません。

・本人の所得制限があります。(20歳前障害による障害基礎年金と同様のもの)

・請求書の受付日が受給権発生日となり、支給開始は請求日の翌月からとなります。

・初診日が平成3年5月1日前にある場合は、「月の前々月」を「月前における直近の基準月の前月」に読み替える規定はありません。

・20歳前に初診日があり、初診時における厚生年金保険法の納付要件を満たしていない場合は、国民年金法の20歳前障害となります。


3 受付日(受給権発生日)と時効

 年金請求を行う時期は非常に重要となります。もらえる金額に差が生じることがあるためです。わずか数日請求が遅れただけで、もらえる年金が10万円変わることもあります。請求時期によってもらえる金額が変わるケースを確実に把握することが重要となります。注意が必要となる2つのケースを確認しておきます。

① 障害認定日請求で、5年の時効が生じる場合

 障害年金は、遡及する請求も少なくありません。時効が5年となっているため、原則として5年以上前の分は受給することができず、もらえる年金は最大5年間分となります。このため、5年以上遡る請求であれば、できるだけ早く請求をする必要があります。


【具体例】



② 事後重症請求、初めて2級による請求の場合

 受給権発生が請求日となるため、実際に受給できるのは請求を行った翌月分からとなるため、次の図のように、請求日が1日違うだけで1ヶ月分の年金額が変わってくるケースがあります。 




4 初診日が65歳以上の厚生年金加入期間中の場合

初診日が65歳以上の厚生年金加入期間中である場合は、次の取り扱いとなります。

○認定日請求のみが可能であり、事後重症請求はできません。

○納付要件について、直近1年要件はつかえません。

○老齢基礎年金等の受給権を取得している場合は、65歳以降の厚生年金被保険者期間は国民年金第2号被保険者とはされません。このため、

・納付要件の計算の基礎となる国民年金被保険者期間は、65歳到達月の前月までの被保険者期間となります。 

・障害等級が1・2級に該当しても、障害厚生年金のみの決定となり、障害基礎年金は支給されません


5 認定事務を行う側から見た障害年金について

 障害年金の支給・不支給を決定する認定事務は、法や認定基準に照らして請求のあった傷病を支給することが妥当か否かを決定します。
公正・公明・平等でなければなりません。請求者側だけの立場に立つわけにはいかないのです。病歴申立書等に心情的な内容、家庭の事情等を書いてこられる場合もありますが、障害認定基準とは無関係であり、決定の材料には入りません。(心情的にはもらっていただけるといいなと思う案件もありますが、個人的な感情で決定が左右されるわけにはいきません)

 初診日の取り扱いに問題が多いのも事実です。審査請求・再審査請求で覆る案件があることからも明らかです。
しかしながら、現在定められている内容、解釈により進めざるを得ません。

 相談・審査・認定事務を行う側に立った場合、最も求めるものは何でしょうか。それは、「問題のないように、受け付けた請求書を滞留することなく処理すること」です。説明誤りをすれば、問題が生じます。誤った決定をすれば、支給決定時は主に内部から、不支給決定時は厚生労働省や日本年金機構本部、審査官・審査会等から指摘されます。

 書類が滞れば、請求者からの苦情となり、サービススタンダード(定められた期限内に決定を行うこと)を達成することができません。
支給されるか支給されないかはどちらでもよいのです。とにかく処理がされることが重要なのです。

 このような相談・受付・審査認定を行う立場の人間が、どのような考えに基づいて、どのような実情で請求が処理されるかを計算に入れておくことは重要であると思います。

  

 障害状態を確認して、等級や不支給の決定は、認定医の意見によるところがほとんどです。

 

6 裁定請求前後の死亡の場合

請求の前に死亡した場合

 死亡した場合であっても、未支給年金を請求することができる親族がいれば障害年金の請求は可能です。
障害給付年金請求書とともに、未支給年金請求書を年金事務所等に提出します。
なお、この場合「認定日請求」を行うことになり、裁定請求の前に死亡しているため「事後重症請求」はできません。
支給決定された場合に受給できる年金は、障害認定日から死亡までの期間分となります。
遺族年金の短期要件を満たすために請求を行うというようなケースもあります。

請求の後に死亡した場合

 裁定請求を行った後に死亡した場合は、未支給年金を受けることのできる遺族がいる場合は、未支給年金の請求を行います。
該当の遺族が誰もいない場合は、審査等が打ち切られ、決定はされません。

7 障害等級3級14号について

 障害等級3級14号の障害厚生年金は、「傷病が治っていないもの」であって、障害の程度が障害手当金相当(労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度)であるものに支払われることになっています。

 このため、「傷病が治っていない」として3級14号と認定されたものについては原則として毎年経過観察が行われ、傷病が治ったか、または症状が固定した場合は、障害の程度に変化がなくても、支給停止となります。




8 有期年数(次回診断書提出年)について

 障害認定時には、障害状態に応じて最短1年~最長5年の有期、又は永久固定の設定がされます。次の内容等が考慮されて決定されます。

・発病年月日や初診年月日からの経過年数

・受給権発生年月日からの経過年数

・傷病の持つ性質・特性

・治療による改善の見込み

・診断書の記載内容

・年齢

 個々の状態に応じて異なりますが、状態の変動が見込まれる場合や、1年6ヶ月以内に症状固定とされた場合、等級変更が行われた場合等は短い有期年数となることが多くなっています。

 永久認定については、概ね65歳以上の診査時が目安となっていますが、65歳未満であっても、障害の程度にもよりますが、次の傷病等は永久固定となることが見込まれます。

・無眼球症

・咽頭全摘出

・欠損障害

・短縮障害

・知的障害

・脳性麻痺

・脳血管障害

・糖尿病性網膜症

人工透析を行っている場合

 腎移植の可能性もあり、原則として5年の有期となります。ただし、70以上で引き続き人工透析を行っている場合は永久認定となります。

腎移植を行った場合は、予後観察期間を2年とし、移植後少なくとも1年は従前等級(2級)とされます。いったん決定された5年の有期はそのまま有効であるため、5年の有期が決定された直後に腎移植を行った場合は、次の認定までの5年間障害年金が支給されることになります。

 

第7章 Q&A


Q1.現在75歳で下肢機能障害による障害年金2級の受給者ですが、加齢による機能退化により下肢機能が全廃となりました。額改定請求は可能でしょうか。


A1.医学的な判断によりますが、明らかに加齢によるものであれば、額改定の対象とならず、傷病の悪化によるものであれば、額改定の対象となります。

 ほとんどの場合、状態の悪化の原因は加齢による原因が多少なりとも含まれますが、状態の悪化を、加齢によるもののみと判断されるケースは少ないと思われます。高齢者の額改定請求を制限する規定や取り扱いもないため、主治医等とよくご相談のうえ、請求を考えられるとよいかと思われます。




Q2. 現在70歳ですが、障害年金の請求はできますか?

A2. まず、事後重症請求はできません。65歳に達する日の前日までに請求をしなければならないためです。認定日請求であれば、請求ができる場合とできない場合があります。まず基本は、65歳までに初診があることが必要です。60歳以降の初診である場合は、繰り上げの有無や公的年金への加入状況などにより異なるため、注意が必要です。

 認定日時点の現症の診断書が必要となるため、診断書がとれるかどうかもポイントです。

 はじめて2級による請求には年齢制限はありません。65歳に達する日の前日までの現症日の診断書を添付することで請求は可能です。




Q3. 就労していると、精神の障害基礎年金は支給されないのですか。

A3. 就労していることだけをもって支給されないということはありません。療養状況や仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況、身体的機能及び精神的機能、社会的な適応性の程度等により、総合的に判断されます。


Q4.事後重症で決定がされましたが、認定日請求とすることは可能ですか。

A4.事後重症請求を行い事後重症で決定がされても、認定日請求を行うことは可能です。
次の書類を提出することにより、認められた場合は再裁定が行われ、遡及して年金が支払われます。

・年金請求書(障害給付の請求事由を「1 障害認定日による請求」としたもの)

・障害認定日の診断書(直近の診断書は不要)

・加給年金対象者等がいる場合は、受給権発生時(障害認定日)における生計維持確認書類

・年金証書

・取下げ書

・病歴就労状況等申立書(前回請求時からの病歴を記載)

 ・理由書(前回請求時に事後重症請求とした理由が矛盾する場合、その理由の説明)

 ・20歳前障害等の場合は、所得証明書(確認が必要となる年度分)

認定日請求を行う時点から5年以上遡及する場合は、時効によりもらえない期間が生じることになります。




Q5.診断書に不備がありますが、受付はしてもらえますか。

A5.受付日は、事後重症請求の受給権発生日となるなど、非常に重要であるため、書類がそろい次第速やかに請求することが必要となりますが、診断書等に不備がある場合、受付をしてもらえないこともあります。不備の程度にもよりますが、軽微な不備であればできるだけいったん受付をしてもらうようにします。

注意が必要なのは、受付日よりも診断書の作成日や現症日が後になってしまうような場合です。受付日よりも診断書の作成日や現症日が後になってしまうことは原則として認められないため、受付日が無効となり、受付日は診断書作成日等になってしまいます。ただし、審査により追加で診断書の提出を求められるような場合はこの限りではありません。




Q6.家族が相談に行きたいのですが、本人の状態が悪く委任状が書けません。

A6.相談内容にもよりますが、家族の方の場合は身体障害者手帳や要介護認定の通知書、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳等を持参することにより相談が可能です。施設に入っている場合等で、施設・療養機関の職員の方が相談される場合は、施設長の証明(写しでも可)及び家族からの相談依頼文書、家族が相談できない申立書等が必要となります。

 

Q7. 65歳以降の障害年金について、注意事項を教えてください

A7.65歳以降の障害年金については、注意が必要なことが多くあります。

【新規請求】

  事後重症請求はできません。認定日請求や初めて2級による請求は可能です。多くの場合、相当期間遡った診断書が必要となるため、とれるかどうかがポイントです。

【額改定請求】

  一番注意が必要なのは、障害等級3級の場合です。過去に1度も2級以上に決定されたことがなく、ずっと3級での受給している場合は、額改定請求ができません。それ以外であれば、額改定請求に年齢制限はありません。障害状態の悪化であれば、額改定が認められることになりますが、単に加齢による状態の悪化では額改定が認められるのは難しいと思われます。

【支給停止事由消滅届】(停止中の場合)

  受給権があるかどうかを確認することが一番重要です。受給権が失権している場合は、提出ができません。3級状態該当により停止であれば失権はしないのですが、3級状態より軽い状態に該当して停止となっている場合は、65歳到達かつ3年経過で失権するので注意が必要です。




Q8. 障害年金を請求しましたが、程度が軽いとして不支給となりました。その後しばらくして状態が悪化したのですが、1年後でなければ再度請求はできませんか?

A8.不支給決定が行われた場合、1年を待つことなく再度障害年金請求は可能です。状態が急に悪化した等の状態であれば、再度の請求をご検討下さい。



第8章 資料

1 主な年金証書コード

コード内容
5350障害基礎年金
6350障害基礎年金(20歳前)
2650障害基礎年金(障害福祉年金からの裁定替分)
1350障害厚生年金(+障害基礎年金)

2 診断書コード

 新法旧法
1永久固定永久固定
2呼吸器疾患 
3循環器疾患 
4聴力・口腔 
5眼の障害眼・聴力・口腔
6肢体障害肢体障害
7精神障害精神障害
8腎・肝疾患、糖尿病内科疾患
9血液・造血器・その他その他障害

3 傷病コード

01呼吸器系結核肺胸膜、気管支、咽頭の結核性膿胸を含む15--
02腸、腹膜の結核 16耳の疾患外傷を含む
03骨、関節の結核 17脊柱の疾患頚腕症候群、後縦靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等
04その他の結核 18関節の疾患関節リウマチ、変形性関節症等
05梅毒進行麻痺(精神)19中枢神経の疾患パーキンソン病、舞踏病、脊髄小脳変性症、てんかん、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症
06精神障害アルツハイマー20呼吸器の疾患気管支ぜんそく、気管支拡張症、肺気腫等
07脳血管障害脳動脈、脳実質外動脈の狭窄を含む21腎疾患 
08眼の疾患外傷を含む22肝疾患 
09循環器系の疾患高血圧性疾患、レイノー症候群、ビュルガー病等を含む23消化器系の疾患腸閉塞、腹膜癒着、胆のう、胆道、膵臓の疾患を含む
10じん肺症 24血液、造血器の疾患 
11脊柱の外傷脊髄損傷25糖尿病糖尿病性の各疾患を含む
12上肢の外傷上肢帯を含む26新生物ホジキン病、多発性骨髄腫、白血病等を含む
13下肢の外傷骨盤帯を含む27その他筋ジストロフィー、筋無力症、スモン、ベーチェット病、大腿骨骨頭無腐性壊死、膠原病等
14その他の外傷脳挫傷28知的障害 

※ 傷病の分類は、原則として基礎疾患により分類されますが、基礎疾患が明らかでない場合は、症状発見臓器によります。

【例】糖尿病性腎症 → コード25

第9章 コラム

1 市区町村と障害年金

 現在、国民年金事務の一部は市区町村で行われています。国が交付金を支払うので、市区町村において第1号被保険者の資格取得や免除、年金の裁定請求等の国民年金事務をお願いしている状態です。

しかしながら多くの市区町村において国民年金事務は市区町村が行うのではなく、国が一元的に行うべきとして要望が出されています。
その理由は、市区町村で受け付けて日本年金機構で処理・審査することは二重の手間であること、窓口が市区町村なのか年金事務所なのかわかりにくい、経費が全額支払われていないため等です。

とりわけ障害基礎年金については高度の専門知識が必要であり、限られた人数、短期間で人事異動する市区町村職員が行うことには限界があり、20歳前障害基礎年金の所得審査事務が短期間での膨大な事務量となり、市区町村で行うことは困難であるとされています。

 確かに国民年金事務は、適用事務、免除事務、老齢年金・障害年金・遺族年金・未支給年金などの年金給付事務等広範囲に及び、近年事務の取扱いの厳しさも増す一方です。マニュアル等は膨大な量になっているのが現状であり、とても少人数の市区町村職員でこなせるものではありません。

 国としては、市区町村が住民にとって身近な窓口であり、住民サービスの観点からも引き続き協力をお願いしているところですが、抜本的な改正が必要となっています。

2 身体障害者手帳と障害年金

障害年金の申請を行う場合には、参考資料として障害者手帳(写)を添付することが多くなっています。

障害年金は原則として1年6ヶ月を経過しないと請求できないのに対し、身体障害者手帳はもっと早く請求が可能であるためです。
身体障害者手帳が2級だから、障害年金も2級になると思っておられる方も多いのですが、障害者手帳と障害年金の等級とは別となっています。
身体障害者手帳をもっていることが受給の要件となっているわけではないため、身体障害者手帳をもっていなくても障害年金の請求は可能です。

身体障害者手帳には傷病名や等級が記載されているため、認定の参考資料となります。肢体の請求で、手帳に言語機能障害が記載されていれば、言語での請求の意思を確認したりもします。

また、発行日、再発行日が記載されているため、障害年金請求において重要な初診日の参考資料となります。
障害年金の初診日としている日よりも前に障害者手帳が発行されていれば、障害年金の初診日を再確認するよう求められます。
初診日の参考資料が身体障害者手帳しかない場合は、障害者手帳申請時の診断書の写しが必要とされることもあります。

2024/10/23

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です