記録が見つかっても、年金が減額となるケース
-目次-
- 1 ①通算老齢受給者で、1年未満の他制度との重複が判明した場合
- 2 ②第四種期間を有し、新たに厚生年金期間が判明して第四種期間が取り消される場合
- 3 ③障害厚生年金の受給者(25年未満の厚生年金の加入)
- 4 ④年金計算の基礎としない昭和32年9月以前の厚年記録を有する人で、同月以後の標準報酬月額の低い記録が判明した場合
- 5 ⑤配偶者が加給年金を受給している場合、新たな記録判明に伴う20年以上の老齢厚生年金受給により加給年金停止
- 6 ⑥旧国民年金法の5年年金・10年年金受給者で、新たに厚生年金期間が判明し、当該期間が5年年金・10年年金の納付と重複する場合
- 7 ⑦受給者の年金に振替加算がついている場合、新たな記録判明に伴う20年以上の老齢厚生年金受給により振替加算停止
- 8 ⑧遺族厚生年金の「短期要件」の年金受給者
- 9 ⑨国民年金期間と脱退手当金支給済厚生年金期間との重複
①通算老齢受給者で、1年未満の他制度との重複が判明した場合
【通算老齢年金】
大正15年4月1日以前に生まれた人または昭和61年3月31日に旧厚生年金保険法・旧船員保険法による老齢年金もしくは共済組合が支給する退職(減額退職)年金(昭和6年4月1日以前に生まれた人に支給されるものに限る)の受給権を有している人については、旧通算年金通則法または旧公的年金各法による通算老齢(退職)年金が適用される。(法附(60)31①・63①)
【受けられる条件】
通算老齢年金は、1.の受給資格期間と2.の年齢の要件をともに満たしたときに支給される。(旧国年法29の3、旧厚年法46の3等)
1.受給資格期間
通算老齢(退職)年金を受けようとする公的年金制度の通算対象期間が1年以上あるが、その制度から老齢(退職)年金を受けられるだけの受給資格期間を満たさないで、次のいずれかに該当することが必要
①通算対象期間を合算した期間が25年(または生年月日に応じた期間短縮の特例期間)以上あること
②国民年金以外の公的年金制度の通算対象期間が20年(または生年月日に応じた期間短縮の特例期間)以上あること
③他の公的年金制度の通算対象期間が、その制度の老齢年金または退職年金を受けられるだけの受給資格期間を満たしていること
④他の制度から老齢年金または退職年金を受けることができること
2.支給を受けられる年齢
- ①国民年金 65歳から。ただし、60歳以上65歳未満においても希望により支給を受けることができるが、この場合は年齢に応じて一定の額が減算される。
- ②厚生年金保険 60歳から
- ③船員保険 60歳から
- ④各共済組合 60歳から
通算老齢年金や通算退職年金を受給するためには、1つの年金制度に「1年以上」加入していることが条件。さらに、他の年金制度とで一定の加入年数がなければならない。1年未満の厚生年金記録が判明し、国民年金期間と重複していたため国年記録が削除された場合において、厚生年金は受給できず、削除された分国民年金は減額となる。
(国民年金が「1年以上加入」要件に該当しなくなる場合は国民年金不支給となる)
②第四種期間を有し、新たに厚生年金期間が判明して第四種期間が取り消される場合
【第四種被保険者】
① 厚生年金(船員保険)の被保険者期間が10年以上あって、
② 厚生年金の被保険者期間が20年(中高齢の被保険者期間の特例により、一般男子は40歳、女性と坑内員・船員は35歳から15年)に達するまで個人で加入を続ける人のことをいう。
昭和60年改正では、第四種被保険者の制度は廃止されたが、経過的に次の条件を満たしている人は、第四種被保険者となることができる。(法附(60)43・44)
Ⅰ.昭和16年4月1日以前に生まれていること
Ⅱ.昭和61年4月1日現在、厚生年金の被保険者であること
Ⅲ.昭和61年4月から退職する月までのすべての期間、厚生年金保険または共済組合に加入していること。
Ⅳ.厚生年金保険の被保険者期間が10年以上あること
厚生年金期間が判明した場合、その分の第四種期間は取消となる。第四種期間の報酬月額が、判明した厚生年金期間の報酬月額よりも高い場合は減額となる。
③障害厚生年金の受給者(25年未満の厚生年金の加入)
被保険者期間が300月未満の場合は、300月加入したとみなして年金額の計算を行う。
通常報酬月額の低い厚生年金期間が判明した場合、平均標準報酬額が低下しても加入期間が増えるため年金額は増える。しかし上記の場合300月と有利な月数で計算されているため、平均標準報酬額が低下しても加入期間は増えず、結果年金額は下がることとなる。
④年金計算の基礎としない昭和32年9月以前の厚年記録を有する人で、同月以後の標準報酬月額の低い記録が判明した場合
【平均標準報酬月額】
過去の低い標準報酬月額を切り捨てるため、S32.9以前の標準報酬月額については、次のように扱われることになっている。(法附(44)4)
○昭和32年9月以前の被保険者記録がある人
①S32.10~S51.7までの被保険者記録が3年以上ある人については、S32年9月以前の標準報酬月額は計算の対象とせず、S32.10月以後の標準報酬月額で計算
②昭和32年10月から昭和51年7月までの被保険者記録が3年に満たない人については、S32.9以前を含めたS51年7月までの直近の3年間の標準報酬月額で計算する。なお、全体の被保険者期間が3年に満たないときは、全体の標準報酬月額を平均することになっている。
標準報酬月額の優遇措置があるため、標準報酬月額の低い記録が見つかることにより、期間は増えるが平均標準報酬月額が下がり、年金額の減少となるケースがある。
⑤配偶者が加給年金を受給している場合、新たな記録判明に伴う20年以上の老齢厚生年金受給により加給年金停止
配偶者が次の年金を受けられる間は、加給年金が支給停止される
(厚年法46,法附(60)61①,厚年令3の7)
・厚生年金保険法による老齢厚生年金および障害厚生年金並びに旧厚生年金保険法による老齢年金および障害年金(被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例15~19年などに該当する人は、その期間)以上あるものに限る)
厚生年金期間が判明し、上記に該当することとなった場合には、配偶者の加給年金は支給されない。
⑥旧国民年金法の5年年金・10年年金受給者で、新たに厚生年金期間が判明し、当該期間が5年年金・10年年金の納付と重複する場合
【5年年金・10年年金】
明治44年4月1日以前に生まれた者は(昭和36年4月1日において50歳を超える者)は,受給資格期間の短縮特例によっても60歳までに10年の期間を満たすことができないため、国民年金の被保険者から除外され、70歳から老齢福祉年金を支給することとされたが、このうち明治39年4月2日から明治44年4月1日までの間に生まれた者については、過去3回任意加入の途を開いていた。これらの加入者は10年間または5年間保険料を納付すれば老齢年金が受けられることから、この特例による老齢年金を一般に10年年金、5年年金と称している。
【10年年金】
明治39年4月2日から明治44年4月1日生まれの方の特例の年金。
昭和36年当時、上記対象者に対し特例加入を認めた。国民年金に加入したい方は、昭和36年3月31日までに申し込んで国民年金を10年かければ、65歳から10年年金を支給しますというものであった。10年年金は割りのよい年金であり、通常の年金額以外にも加算がある。
【5年年金】
明治39年4月2日から明治44年4月1日生まれの方の特例の年金。
上記10年年金に加入しそこなった人が対象。加入を希望する人は昭和45年1月1日~昭和45年6月30日の間に申し出て5年年金に加入した。2度目の受付は昭和48年10月1日~昭和49年3月31日(再開の5年年金)
厚生年金期間が判明した場合、期間重複するときは国民年金の納付期間は無効となる。
○残る厚生年金被保険者期間と5年年金以外の国民年金期間で受給権を満たす場合は、年金額が減額となる
○残る厚生年金被保険者期間や5年年金以外の国民年金期間では受給権を満たさない場合は、年金受給権がなくなる。
⑦受給者の年金に振替加算がついている場合、新たな記録判明に伴う20年以上の老齢厚生年金受給により振替加算停止
【振替加算】
老齢厚生年金または退職共済年金等の配偶者加給年金額の対象となっていた人のうち、昭和41年4月1日以前に生まれた人に支給される老齢基礎年金には、受給者の生年月日に応じて228,600円×(1~0.067)が加算される。(法附(60)14①)
配偶者の年金に加給年金がないと、受給者本人の老齢基礎年金に振替加算されることはない。
つまり⑤と同様、振替加算は支給されない。
⑧遺族厚生年金の「短期要件」の年金受給者
【短期要件】
300月未満の厚生年金期間は300月で計算する。
通常報酬月額の低い厚生年金期間が判明した場合、平均標準報酬額が低下しても加入期間が増えるため年金額は増える。しかし短期要件で受給の場合300月と有利な月数で計算されてるため、平均標準報酬額が低下しても加入期間は増えず、結果年金額は下がることとなる。
⑨国民年金期間と脱退手当金支給済厚生年金期間との重複
【脱退手当金】
昭和16年4月1日以前生まれで、5年以上厚生年金をかけた人が対象。
国民年金期間と重複していた場合、脱退手当金済記録であっても国民年金期間は削除となる。よって国民年金の減額となる。